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3 法人課税

(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設

○デジタル技術を活用した企業変革を進める観点から、「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による企業変革に向けた投資について、税額控除(5%・3%)又は特別償却(30%)ができる措置を創設します。(2年間の時限措置)

事業適応計画

○事業適応計画の認定要件を満たした上、次の要件について主務大臣から確認を受ける必要。

  1. デジタル(D)要件(データ連携・共有、レガシー回避、サイバーセキュリティ)

    ◆他の法人等が有するデータ又は事業者がセンサー等を利用して新たに取得するデータと既存内部データとを合わせて連携すること

    ◆クラウド技術を活用すること

    ◆情報処理推進機構が審査を行う認定(DX認定)

  2. 企業変革(X)要件(ビジネスモデルの変革、アウトプット、全社戦略)

    ◆商品の製造原価が8.8%以上削減されること等

    ◆生産性向上や売上高の上昇の目標を定めること
    ・計画期間内で、ROAが2014年~2018年平均を基準値として1.5%ポイント向上
    ・計画期間内で、売上高伸び率≧過去5年度の業種売上高伸び率+5%ポイント

    ◆投資総額が売上高比0.1%以上であること

課税の特例の内容

●認定された事業適応計画に基づいて行う設備投資について、以下の措置を講じる。

表:課税の特例の内容

※設備投資総額の上限:300億円

(注1)クラウド技術を活用したシステムへの移行に係る初期費用(繰延資産)

(注2)機械装置及び器具備品にあっては、ソフトウェア又は繰延資産と連携して使用するものに限る。

(注3)税額控除の控除上限は、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制と合わせて当期の法人税額の20%を上限。

(2)カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設

○2050年カーボンニュートラルに向け、脱炭素化効果の高い先進的な投資(化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資)について、税額控除(10%・5%)又は特別償却(50%)ができる措置を創設します。(3年間の時限措置)

事業適応計画

【計画の経済産業大臣の認定】

  1. 脱炭素化を加速する製品を生産する設備(需要開拓商品生産設備)

    ①需要開拓商品の生産を行うために不可欠な機械装置であること

    ②専ら需要開拓商品の生産に使用されること

    (※)燃料電池・化合物パワー半導体等のうち、特に優れた性能を有するもの

  2. 生産プロセスを大幅に省エネ化・脱炭素化するための最新の設備(生産工程効率化等設備)

     ・ 事業所等の単位で炭素排出量1単位当たりの付加価値額(炭素生産性)の目標が、「3年以内に7%又は10%以上向上」を満たす計画であること

課税の特例の内容

●認定された事業適応計画に基づく脱炭素化効果の大きい設備投資について、以下の措置を講じる。

  1. 需要開拓商品生産設備
    表:需要開拓商品生産設備の課税の特例の内容
  2. 生産工程効率化等設備
    表:生産工程効率化等設備の課税の特例の内容
    (*)導入される設備が事業所の炭素生産性を1%向上させることを満たす必要。

※設備投資総額の上限:500億円

(注)税額控除の控除上限は、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制と合わせて当期の法人税額の20%を上限。

(3)活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し

○厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる企業について、2年間の時限措置として、税額控除の上限を引き上げる(改正前:25%→30%)とともに、研究開発投資の増加インセンティブを強化する観点から、控除率カーブの見直し及び控除率の下限の引下げ(改正前:6%→2%)を行うこととします。

○このほか、クラウド環境で提供するソフトウェアなどの自社利用ソフトウェアの制作に要した試験研究費を、研究開発税制の対象とするなど所要の見直しを行うこととします。

(4)コロナ禍を踏まえた賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直し(人材確保等促進税制)

○新たな人材の獲得及び人材育成の強化を促しつつ、第二の就職氷河期を生み出さないようにする観点から、新規雇用者に対する給与を一定割合以上増加させた企業に対して、新規雇用者給与等支給額の一定割合を税額控除できる措置を講ずることとします。(2年間の時限措置)

○加えて、事業変革に向けた人材投資(教育訓練費)を増加させた企業に対しては、税額控除率を上乗せします。

≪改正前≫

【要件】

継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率3%以上

②国内設備投資額:当期の減価償却費の総額の95%以上

③雇用者給与等支給額: 対前年度を上回ること

【税額控除】

  • 雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%の税額控除
  • 教育訓練費増加要件(当期の教育訓練費 ≧ 前期・前々期の教育訓練費の平均の1.2倍)を満たす場合には控除率を5%上乗せ(→合計20%)
  • 税額控除額は法人税額の20%を限度

≪改正後≫

【要件】

新規雇用者 (※1) 給与等支給額:対前年度増加率2%以上

②雇用者給与等支給額: 対前年度を上回ること

【税額控除】

  • 新規雇用者 (※2) 給与等支給額 (※3) の15%の税額控除
  • 教育訓練費増加要件(当期の教育訓練費 ≧ 前期の教育訓練費の1.2倍)を満たす場合には控除率を5%上乗せ(→合計20%)
  • 税額控除額は法人税額の20%を限度

(※1)雇用保険法に規定する一般被保険者に限られる。

(※2)賃金台帳に新たに記載された者をいう。(一般被保険者以外の者を含む。)

(※3)雇用者給与等支給額の対前年度増加額を上限とする。

(5)繰越欠損金の控除上限の特例の創設

○コロナ禍の厳しい経営環境の中、赤字であっても果敢に前向きな投資(※)を行う企業に対し、コロナ禍の影響を受けた2年間に生じた欠損金額について、その投資額の範囲内で、最大5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大100%(改正前:所得の金額の50%)とする特例を創設します。

※カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等。

事業適応計画

○事業適応計画の認定要件を満たした上、次の要件を満たす必要。

◆将来の成長に向けた投資内容を記載した計画を提出すること

◆計画期間内に達成を見込む業績目標(ROAが計画認定時の直近事業年度比5%ポイント向上など)を定めること

◆投資計画が企業の成長に資する内容であること(単純な維持・更新投資は対象外)

◆主務大臣が①計画を認定するとともに②投資実績を毎年確認

課税の特例の内容

●認定された事業適応計画に基づく果敢な投資を行う企業の繰越欠損金について以下の措置を講じる。

表:繰越欠損金の控除上限の特例の内容

(※)令和2年2月1日から令和3年4月1日までの期間内の日を含む事業年度

(注)この特例における欠損金の控除限度額の引上げは、対象欠損事業年度において生じた欠損金額のうち事業適応計画に従って行った投資の額に達するまでの金額を上限。

図:繰越欠損金の控除上限の特例適用後のイメージ

(6)株式対価M&Aを促進するための措置の創設

○企業の機動的な事業再構築を促し、競争力の維持・強化を図る観点から、自社株式を対価として、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aについて、対象会社株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べる措置を講ずることとします。

(注)自社株式にあわせて金銭等を交付するいわゆる混合対価については、金銭等が20%以下であるものに限ります。

図:株式対価M&Aを促進するための措置

(7)投資運用業等の役員に対する業績連動給与に係る特例の創設

○投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対して支給される業績連動給与について、その算定方法等が記載された事業報告書を金融庁ホームページに掲載するなど一定の要件を満たした場合に、損金算入を可能とする措置を設けることとします。

(8)中小企業向け投資促進税制等の延長等

①中小企業者等の法人税率の特例及び中小企業投資促進税制等の延長等

○租税特別措置法による軽減税率(税率15%)の適用期限を2年延長します。

○中小企業投資促進税制について、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象業種の追加等をした上で、適用期限を2年延長します。

○商業・サービス業・農林水産業活性化税制について、中小企業投資促進税制と統合の上、廃止します。

○中小企業経営強化税制について、経営資源集約化設備を追加した上、適用期限を2年延長します。

【租税特別措置法による軽減税率】
中小企業者等の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税の税率を15%(本則:19%)とする制度。

【中小企業投資促進税制】
中小企業者等が、特定機械装置等の取得等をした場合に30%の特別償却又は7%の税額控除ができる制度。

【商業・サービス業・農林水産業活性化税制】
商業・サービス業・農林水産業を営む中小企業者等が、経営改善のために店舗改修などの設備投資を行った場合に30%の特別償却又は7%の税額控除ができる制度。

【中小企業経営強化税制】
中小企業者等が、特定経営力向上設備等の取得等をした場合に即時償却又は7%(資本金3,000万円以下の法人は10%)の税額控除ができる制度。

②地域未来投資促進税制の見直し

○地域経済を牽引する事業について集中的に支援する観点から、事業の先進性の判断基準に投資収益率又は労働生産性に係る要件を追加するとともに、サプライチェーンの維持・強化を目的とする類型を追加する等の見直しを行った上、適用期限を2年延長することとします。

(9)中小企業における所得拡大促進税制の見直し

○中小企業全体として雇用を守りつつ、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、適用要件を見直した上で、適用期限を2年延長します。

≪改正前≫

【要件】

継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率1.5%以上

②雇用者給与等支給額:対前年度を上回ること

【税額控除】

  • 雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%の税額控除
  • 継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、控除率を10%上乗せ(→合計25%)
  • 税額控除額は法人税額の20%を限度

≪改正後≫

【要件】

雇用者給与等支給額:対前年度増加率1.5%以上

【税額控除】

  • 雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%の税額控除
  • 雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、控除率を10%上乗せ(→合計25%)
  • 税額控除額は法人税額の20%を限度

※教育訓練費増加等の要件:次のいずれかの要件

①当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費の1.1倍

②中小企業等経営強化法の認定に係る計画
(【改正後】中小企業事業再編投資損失準備金制度に係る経営力向上計画の追加)における経営力向上の証明

(10)中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

○M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から、M&Aに関する経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、株式譲渡によってM&Aを実施する場合(取得価額が10億円以下の場合に限る。)において、株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積立金額を損金算入できることとします。(計画の認定期限:令和6年3月31日)
この準備金は、据置期間終了後、原則として、5年間で均等額を取り崩して益金算入することとします。

○また、当該認定計画の中で、中小企業経営強化税制の新たな類型の適用ができることとするとともに、所得拡大促進税制の上乗せ要件に必要な計画の認定を不要とします。

図:中小企業の経営資源の集約化に資する税制

※事業譲渡によってM&Aを実施する場合についても対象

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