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Chapter4 国際課税

外国子会社合算税制の見直し

国際的な租税回避や脱税は、企業の公平な競争条件を損ない、納税者の信頼を揺るがす大きな問題です。この問題を解決するために立ち上げられた「BEPSプロジェクト(注)」を、日本は主導してきました。

こうした流れを受けて、「外国子会社合算税制(外国子会社を利用した租税回避を防止するため、一定の条件に該当する外国子会社の所得相当額を日本の親会社の所得とみなして合算課税する制度)」について、日本企業の海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応できるよう総合的に見直しています。

(注)BEPS(Base Erosion and Profit Shifting(税源浸食と利益移転))プロジェクトとは?

一部の多国籍企業による、各国の税制の違いや抜け穴を利用した課税逃れに対し、各国が協調して対応するために G20・OECDによって平成24年6月に立ち上げられたプロジェクト。日本は、立上げから最終報告書の作成、合意実施の枠組作りに至るまで、主導的役割を果たしてきた。平成27年10月には15の勧告をまとめた最終報告書が公表され、現在、合意事項の実施段階に入っており、日本を含めた各国において国内法の整備等が行われている。

改正のイメージ

【改正前】租税回避リスクを外国子会社の税負担率(20%未満)等により把握→【改正後】租税回避リスクを外国子会社の所得の種類等により把握
(注1) 異常所得:外国子会社の資産規模や人員等の経済実態に照らせば、その事業から通常生じ得ず、発生する根拠のないと考えられる所得。制度上は「経済活動基準」を経て「会社の実体がある」と判定された外国関係会社における、部分合算対象の一項目と位置付けられているが、結果的には、全ての外国関係会社に対して合算対象として適用される。
(注2) キャッシュボックス:総資産に比べ、いわゆる受動的所得の占める割合が高い事業体。具体的には、総資産の額に対する一定の受動的所得の金額の合計額の割合が30%を超える外国関係会社(総資産の額に対する有価証券、貸付金、貸付けの用に供している固定資産及び無形資産等の合計額の割合が50%を超える外国関係会社に限る)。
(注3) 経済活動基準:外国関係会社が所得を得る実体を備えているか否かを確認するための4つの基準(後述画像参照)。

具体的には、合算の判断基準となる租税回避リスクを、外国子会社の税負担率により把握する現行制度から、所得や事業の内容によって把握する仕組みに改めています。その際、一定の金融所得や実質的活動のない事業から得る「受動的所得」は原則として合算対象とし、経済活動の実体のある事業から得る「能動的所得」は、外国子会社の税負担率にかかわらず、合算対象外としています。見直しに当たっては、企業の事務負担に配慮しています。新制度は、平成30年4月1日以後に開始する外国子会社の事業年度から適用されます。

見直しの主なポイント

日本企業の海外での事業展開を阻害することなく、効果的に租税回避リスクに対応できるよう、現行制度の骨格は維持しつつ、以下を見直し。見直しに当たっては、租税回避に関与していない企業に過剰な事務負担がかからないよう配慮。

見直しの目的 内容
  • 会社単位の税負担率が一定率(トリガー税率)以上であることのみを理由に、合算対象とされないことへの対応
  • 租税回避リスクに効果的に対応しつつ、現行制度と比較して過剰な事務負担が企業にかからないようにする
  • 資本関係は無いが、契約関係等により子会社を支配しているケースや間接支配への対応
  • 実体ある事業を行っている航空機リース会社や製造子会社の所得が合算されないよう対応
  • 第三者を介在させることで、「非関連者基準」を形式的に満たすケースへの対応
  • 経済実体のない、いわゆる受動的所得は合算対象とする
  • トリガー税率を廃止し(①)、ペーパーカンパニー等の所得は、原則、会社単位で合算(②)
    (注:ただし、一定の保険委託者・資源投資法人については、事業実態に配慮した特例を措置)
  • 事務負担軽減の措置として、会社単位の租税負担割合「20%」による制度適用免除基準を設定(③)
  • 実質支配基準の導入と持株割合の計算方法の見直し(④)
  • 事業基準・所在地国基準の判定方法の見直し(⑤)
  • 非関連者基準の判定方法の見直し(⑥)
  • 受動的所得の対象範囲の設定(配当、利子、無形資産の使用料等)(⑦)
    (注:ただし、金融機関が本業から得る金融所得は合算対象から除外)
図:外国子会社合算税制の見直し

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