ファイナンス 2026年1月号 No.722
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SPOT 昭和 100 年―百年前の新聞や日記から―その 3ファイナンス 2026 Jan. 20(「櫻田門外の變圖蓮田市五郎筆…浪士の一人なる蓮田市五郎の筆であつて細川家に幽囚中に描」かれたもの。出典:東洋文化協会編『幕末・明治・大正回顧八十年史』第 2 輯 , 東洋文化協会 , 昭和 10 年 . 国立国会図書館デジタルコレクション幕末・明治・大正回顧八十年史 第 2 輯 - 国立国会図書館デジタルコレクション 幕末・明治・大正回顧八十年史 第 2 輯 - 国立国会図書館デジタルコレクション)た、行年八十三、刀自は井伊掃部頭の次女に生れ和歌並に書を能くした葬儀は十四日午前十時自邸において挙行のはず。」。桜田門外の変で倒れた井伊掃部頭直弼のお姫様が亡くなったとの報道。1926 年は1860 年 3月の桜田門外の変から66年目。江戸時代はそんなに遠くない。「横浜の高台に憩ひの地を得て 浮び上がる四百五十の霊 薩南に三百年の夢を破った英軍犠牲者の記念塔建つ 念願届いたモリソン翁」〔2.12 報知〕は「薩南の健児が鹿児島湾頭に砲火を交へた文久二年の『薩英戦争』こそ徳川三百年の迷夢を破つた警鎖として日本開国史上忘れる事のできない一戦であるが、その際の英軍の戦死者四百五十名の英霊はその勇士の名さへ定かならぬ骨片となつて四百五十人分の遺骨は英人モリソン翁の手にさみしくまもられている。…横浜市長も日本人間を説いて寄付金をつのり、英本国では陸海軍両省はもとより、…在留英国人知名の人々も賛してこの記念塔を生むこととなつた。山の手フランス山の急坂を上り詰めた地点に建設される二丈一尺のきらびやかな記念塔は工程を急いで、陽春の候には、其の記念塔の下に作られる骨ツボの中に、四百五十の遺骨は久遠の安住地を得るはずである。」と薩英戦争で英国も相当の損害を被ったと知られる。「庄内藩の國家老 名門に生れた奥方 糊さへもすすれぬ昨今 祖父は二千石の禄を食み、薩長の心膽を寒からしめた勇将 夫は贋金造りとなり獄舎につながれ 娘は浪花節語りと流浪の旅」〔3.1 山形新聞〕は「徳川家の四天王と謳はれた酒井左右衛門尉の国家老としてありし昔は食禄二千石をはみ槍一筋の名門で旧庄内藩中権威並ぶものなき松平甚三郎の後裔こそこの寒空に糊口に窮していると云ふ聞くも涙の哀話がある。…其の嫡子三郎は悪戯にたけ贋造紙幣の巨頭となり…世間は松平家を相手にせぬ程零落し、…残された友栄は…現在は…ささやかな二階に一定の収入もなく二三の同情者の助けで喰はれずに暮らしているが、世が世ならば国家老の奥方、余りに変わり果てた零落と云わねばならぬ…」と武家の名門の末路を報ずる。「大西郷の金時計を掏った老賊が法廷で得意の物語 明治四年の春銀座街頭に犬を連れブラブラやって来た大西郷に突當る 八十四歳の老人十八ケ所を荒した公判」〔3.10 時事〕は「大西郷の金時計を掏つたのを半生の誇りとして、牢獄を住家にしている老賊の公判が…開かれた、…案外軽い求刑に被告の金太は大喜びで検事に叩頭百拝、其後で渡辺検事が『お前は西郷さんの金時計を掏摸たさうだがどんな工合にして取つたか』と訊ねると爺さんは急に得意に反り返つて、『…明治四年の春でした仲間の銀公と銀座を物色して居ると向こふから西郷さんが犬を連れてブラブラ歩いてくるのに出会ひました、見ると西郷さんの兵児帯の前に、長い鎖の先に金時計がぶら下がつていました、私達の仲間では西郷さんの時計が掏摸るか掏摸ないかで、大変な争ひになつている時でしたから銀公と相談して、銀公は後ろから行って西郷さんに突き当たり私は前から突き当たつた機みに時計は首尾よく私の手のうちにありましたが、後からついて来た書生さんに見附けられ、結局西郷さんの拳固を三つばかり頂戴して勘弁して貰つたのです。それから西郷さんの金時計を取つたと言って仲間では評判になりました』と手振身振りで掏摸の一条を聴かせたのはとんだ景物であつた。」とこれが自慢話になるのも西郷さんの人気ゆえか。「四十年間もみ抜いた 板舟権の因縁ばなし 河岸は千二百万円といひ 市は九十万円出すといふ 家康以来のいはく付」〔5.18 報知〕は「話は三百年の昔にかへる、江戸開府の時家康は摂津ツクダ村から丗三人の漁師を連れて来た、さうして東京湾の魚漁を命じ、本丸と大名屋敷へのおさめ残りの魚は幅一尺、長さ六寸の平板に並べて日本橋のたもとで町民に売り捌いた、これが板舟権の芽生えである、さうして伝統的に特殊の権利となり、明治以後財産権としての判決例も生まれた、ところが明治二十二年市区改正事業として魚市場移転問題が起こつた、以来この問題は板舟権にからまつて多年の懸案となつていた。しかし大震災は最後の断案を下した、市は強制的に魚市場を築地に

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