ファイナンス 2025 Nov. 39図 1:貿易額対 GDP 比(%)の推移図 2-1:GVCs への後方参画図 2-2:GVCs への前方参画図 3:総雇用にしめる輸出関連雇用の割合海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー での競争力が損なわれていることが理由であり、繊維、服飾、革製品、靴といったより労働集約的なセクターで GVCs に参画し、輸出を多角化することが雇用創造のために重要だと世界銀行からは指摘されている。こうした現状を踏まえ、世界銀行からは、輸出の増加・雇用創出のため、通関手続きの簡素化等による貿易にかかるコストの削減、関税・非関税障壁の削減、自由貿易協定を含む貿易統合の選択肢の再評価が、インドが考慮しうる改革として提案されている。こうした中、インドは 2047 年先進国入りの目標を踏まえ、その経済運営において「Self-Reliant India*2(自立したインド)」といった考え方を経済政策の中心に据えている。この考え方は 2020 年 5 月にモディ首相が約 20 兆ルピー(GDP の 10%に相当)の経済対策パッケージの中で発表したもので、インド製品のグローバルなサプライチェーンでの存在を高め、自国の自立を達成することが目指されている。2025 年 8 月の独立記念日におけるモディ首相のスピーチにおいても、自らの経済力を高め、他国への依存を減らすことが Self-Reliant という考え方であり、これが 2047 年先進国入りの目標の基盤であると述べた。他国への依存を減らすことを目指したこの考え方は、一見すると保護主義的に見えるが、実際には、自国での価値創造を高め、グローバルバリューチェーンでの役割を拡大することも主眼となっている、成長戦略・通商政策・経済安全保障といった経済政策全般にまたがる思想であると言える。直 近 で は、2025 年 10 月 13 日、 イ ン ド 政 府 ハ ルディープ・シン・プリ石油・天然ガス大臣がインドのの基盤*2) ヒンディー語では「Atmanirbhar Bharat Abhiyaan」。「Atmanirbhar」は「自立している」といった意味の語。サンスクリット語由来の語Atma(インド哲学のアートマンに由来し、「意識の最も深い内側にある魂・真の自己」という意味)と、同じくサンスクリット語由来の語 nirbhara(「〜に依存する、頼る」という意味)の語から成り立っており、「自分に依存する」、転じて「自立している」の意味。「Bharat」は「インド」、「Abhiyaan」は「キャンペーン」の意。 3 3 Self-Reliant:インド経済政策
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