ファイナンス 2025年11月号 No.720
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SPOT 原子力損害賠償支援資金周辺地域整備資金ファイナンス 2025 Nov. 31図表 9 エネルギー対策特別会計津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(後編)◦石油・天然ガス・石炭の開発の促進◦産油・産ガス・産炭国の協力◦石油・天然ガス・石炭の生産・流通の合理化・石油精製合理化対策・石油流通構造改善対策◦石油・LP ガス等の備蓄◦その他(出所)財務省*9石油石炭税GX 経済移行債一般会計エネルギー需給勘定エネルギー需給構造高度化対策燃料安定供給対策◦再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進◦石油・天然ガスの高度利用◦エネルギー起源CO2 排出抑制への取組◦その他電源開発促進税一般会計電源開発促進勘定電源立地対策 電源利用対策◦電源立地地域への交付金◦放射線の影響や風評被害防止に関する情報提供◦その他◦原子力発電所の安全性向上のための取組◦安定・効率的な電力供給のための取組◦その他一般会計原子力損害賠償支援勘定原子力安全規制対策原子力損害賠償支援対策◦原子力災害に備えた取組◦原子力発電施設等の安全規制を適切に実施するための取組◦交付国債の償還金にかかる借入金利子等◦その他◦東京電力福島第一原子力発電所事故による被災者の健康管理・健康調査◦その他 エネルギー対策特別会計のうち石油石炭税を財源とするエネルギー需給勘定と、電源開発促進税を財源とする電源開発促進勘定は、それぞれの税収を全て一般会計に計上した上で、必要額を特別会計に繰り入れる仕組みとなっています。なお、GX 経済移行債の発行収入金は、全額をエネルギー需給勘定に計上した上で、必要額を電源開発促進勘定に繰り入れることとしています。エネルギー対策特別会計の仕組み会計においては、政府備蓄米の購入・飼料用等への売り払い、更には外国からの麦の購入・売却も行っているため、年間を通じて考えれば、資金の入りと出のズレが発生しており、一時的にそれを埋めているものが短期政府債務証券である食糧証券です。服部:石油証券についてはどうでしょうか。津田:大内(2005)をみると、「国家備蓄石油の購入に要する費用の財源に充てるため」と記載されています。これも、ウクライナ紛争の後などに、石油備蓄がどれだけあるかといった形で話題になりますよね。服部:具体的には、石油の備蓄についてはエネルギー対策特別会計で管理されています。図表9がエネルギー対策特別会計の概要であり、「エネルギー需給勘定」「電源開発促進勘定」「原子力損害賠償支援勘定」があることが分かりますが、石油の備蓄はエネルギー需給勘定の燃料安定供給対策の中で実施されています。*9こちらも先ほどの食糧証券のような形で、FB を発行し、資産サイドで石油を保有し、いざという時のために備蓄しているということだと思います。石油であれば、確かに価格変動リスクはありますが、米のように賞味期限が切れるということはないという特徴があると思います。津田:その通りです。これも結局、円を調達して石油を買い入れている、石油トレーダーのようなポジションになっているわけです。服部:債務管理リポートを見ると、石油証券の方が残高は多いですね。石油証券は、約 1 兆円あります。一方、食糧証券の残高は 1 千億円台から 2 千億円程度です。特別会計ガイドブックにエネルギー対策特別会計のバランスシートが記載されていますが、FB が約 1.2兆円(令和 4 年度)計上されているのに対し、資産側に 1.4 兆のたな卸資産が計上されており、「将来のリスクに備える国家石油備蓄等」と説明されています。津田:石油証券の方が食糧証券よりも残高が多いのは、石油と米などの備蓄規模の違いということによるのでしょうね。*9) https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/fy2024/2024-kakuron-6.pdf

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