ファイナンス 2025年11月号 No.720
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SPOT国庫の資金繰り別口預金について 28 ファイナンス 2025 Nov.「こちらの特別会計からあちらの特別会計に移します」を行った際に、大量の円キャッシュが流入しますので、まずこの指定預金口座で受け入れ、FB を償還する、といった流れになります。一般口は、その他全ての会計分をまとめて、国庫課が管理する口座です。いわば「親口座」のようなものです。それぞれで指定預金口座を持つ 3 つの特会に対して適宜協力を頼んだり、面倒を見たりします。学生:例えば、国庫余裕金の繰替使用であれば、国庫内の資金融通なので、日銀を全く介さずに、帳簿上でと記録するだけということになるかと思います。当座預金と指定預金の間では、きちんと日銀に「これだけの金額を指定預金に移します」という手続きを行う、ということになりますか。津田:当座預金と指定預金の間での移動はもとより、国庫余裕金の繰替使用についても、日銀に通知することになります。例えば夫婦間で資金を貸し借りする際に、わざわざ普通預金口座の数字を細かく調整する必要はないですよね。家族という括りとして、一般会計や特別会計の内部だけでやり取りが完結し、当座預金に影響しない範囲であれば、互いに記録しておくだけで良いですよね。ただ、口座間の資金を移動させない場合も、日銀に経理をしてもらっています。日銀は、資金計理だけでなく国庫計理の事務もしてくれているので、日銀は把握する必要があります。「とりあえずメモしておいてください」と言うようなイメージです。そうでないと、最終的に政府が把握する数字と日銀が管理する数字が一致しないという問題が生じてしまいます。服部:政府預金には「別口預金」というものもありますね。津田:別口預金は特殊な存在です。これは、デジタルではない、当座預金や普通預金に入れられないお金を指します。例えば、政府が小切手を受け取った場合、それが現金化されるまでの間、ここで管理されます。最も典型的なケースは、硬貨の受け払いに関するものです。金融機関で硬貨が余り、「金庫に入りきらないし、すぐに使う需要もないので日銀さんに一旦返却します」といった場合や、「この硬貨は曲がってしまっていて使えないので日銀さんに返却します」といったケースがあります。そうすると、一時的にマネーではなくなるため、一旦この別口預金で受け入れておき、その後、市中で硬貨が不足した時に再びそれを使用するか、あるいは曲がってしまった硬貨は別口預金から引き出して、造幣局において単なる金属の塊にして管理する、といったことが行われます。服部:大内(2005)では国庫の資金繰りを一つの節として設けています。これから国庫の資金繰りについて議論を進めていきたいと思います。以前議論したとおり、政府の歳出と歳入には実際には「波動」があり、必要に応じて FB を発行するという議論をしました。一方、いざという時のために、1,500 億円を当座預金で流動性を確保しておき、それを超えた場合、基本的には金利が付く国内指定預金(一般口)に置いておくということだと思います。大内(2005)では、「政府当座預金の操作を『国庫全体の資金繰り』」と説明しています。大内(2005)では当座預金の残高を1,500 億円に維持しておくための努力について記載してあります。具体的には、「こうした変動に対して、無利子の当座預金に国庫金を必要以上に積んでおくと財政に対してその分余計な資金調達コストがかかる一方、逆に当座預金残高が不足する場合には国庫金の円滑な支払いが阻害されることとなるため、国庫大臣(財務大臣)は日々の国庫金の受払いについて予め予想をたて、⑴ 当座預金残高の不足が見込まれる場合には、財務省証券分としての FB の発行等を通じて資金を調達し、⑵ 必要以上の余剰が生ずる場合には、有利子の国内指定預金(一般口)への組替整理を行う」(p.55)としています。津田:一般口には、一般会計だけでなく特別会計(一部の勘定等を除く)の資金が入っていますので、それぞれの会計の資金繰りを見ることになります。そして、もしどこかの特別会計が資金不足を訴えた場合、他の一般会計にある資金を融通しよう、という形で国庫余裕金の繰替使用を行うのです。特に、国債整理基金特別会計は一般口に属しています。財政融資資金は独自の口座を持っていますが、国債整理基金は持っていませんからね。ですから、国債

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