ファイナンス 2025年11月号 No.720
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SPOT現先と国庫 24 ファイナンス 2025 Nov.のだけを特別会計が経理しているという位置づけです。例えば、国債整理基金は、資金に余裕があれば、日銀と現先取引をしています。日銀と現先取引をするということは、国債の売買を短期的に繰り返していくわけですが、それらをいちいち歳出や歳入として計上していくと、ものすごい金額になってしまいます。そういう形にしない工夫が「資金」になるのです。外国為替資金の場合も同様です。外貨資産を売買する場合、通常であれば歳出あるいは歳入として計上しなければなりません。これを行うと、100 万ドル分の米国債を購入する場合には、予算として事前に 100 万ドルを米国債購入費として計上しなければなりませんし、それを売却する場合も、売却額を歳入に計上しなければなりません。しかし、そのような運用を歳出や歳入に計上して行うことは機動性を損ない、市場業務に馴染みません。そこで、機動的な売買を可能にするために、特別会計とは別に「資金」を設け、その資金を動かして運用を行い、資金からあがってくる損益を歳出や歳入として計上しているのです。服部:特別会計の中に機動的な売買を可能にする工夫が施されているということですね。津田:そうです。外国為替資金は日々売買を繰り返していますが、その中で、売買による差益や保有していた米国債の償還金や利子収入が入ってくることがあります。これらの確定分を、経理するのが特別会計なのです。したがって、特別会計は経理のための勘定に過ぎず、外貨建て資産の在りかは外国為替資金であるという感覚です。これは国債整理基金も同様です。国債整理基金という資金があり、借換債の発行や JGB の償還といったお金の動きについてはこの資金が担っています。そのうち、運用元金の受払等を除き、その年の公債の償還費や利払い費等を会計処理するのが国債整理基金特別会計であり、その償還費・利払い費の原資が一般会計等から繰り入れられてバランスしています。運用元金の受払を歳入歳出に計上しないのは前述のとおり、機動的な運用が目的であり、国債整理基金はそれを可能にするための仕組みということです。服部:このあたりは文章だけだとイメージしにくい部分ではありますね。津田:「資金」という概念については、私は、特別会計が四角い立方体であるとすれば、「資金」はその四角のハコの中に浮かんでいる球体だというイメージをしています。資金は完全に特別会計と密着しているわけでなく、その球体の中で取引をしていて、その一部について、特別会計という立方体に丸い影が投影経理されるイメージです。その影が歳出や歳入として計上されているということです。いわゆる予算の出入りを管理する世界では、「資金」という概念は基本的にあまり登場しません。右から左、左から右に流れていくものを全て計上することが求められますので。しかし、何らかの資金を運用するとなると、予算外の世界が発生し、しかも、そちらの方が金額規模として大きいということもあります。学生:各資金によって運用の方法が異なるといったことでしょうか。津田:そうです。そして、資金は全て法律で定められた存在であるため、何をして良いかも法律で定められています。また経理する上で適当な項目は歳出や歳入として特別会計予算に計上することで、国会に対する説明責任を担保するという制度になっています。服部:先ほど、国債整理基金が現先取引を行っていることについて触れられました。現先取引とは、要はレポのことで、担保付きの短期資金運用に相当するのですが、これについてもう少し説明してもらえますでしょうか。津田:例えば、国債整理基金などで一時的に資金が余る時がありますよね。そうした資金で、日銀との間で現先取引を行います。例えば、日銀が保有する JGBを 1ヶ月程度の期間で買い取り、1ヶ月後に売り返すという取引です。これは見方を変えれば、日銀に対して資金を 1 か月貸し付け、その担保として JGB を受け取っているということとなり、広くマーケットで用いられている短期資金運用手法の一つです。服部:日銀と直接レポ取引を行っているのは、民間金融機関とレポ取引を行うと規模が大きすぎるため、日銀と行っているということでしょうか。津田:規模が非常に大きいため、民間金融機関を相手に取引することは必ずしも現実的・経済的ではありません。服部:金利がプラスになってから変化はありましたか。津田:ずっと昔から制度としては存在しましたが、マ

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