SPOT ファイナンス 2025 Nov. 23国際局地域協力課長 津田 夏樹/東京大学 服部 孝洋本インタビューの目的資金と特別会計とは津田夏樹 国際局地域協力課長服部孝洋 東京大学公共政策大学院特任准教授の概念が出てきます。もっとも、財政における「資金」がどういうものであるかは、意外と説明されていない気がします。「特別会計に関する法律」における外国為替資金特別会計の節を読むと、「外国為替資金特別会計は、政府の行う外国為替等の売買等を円滑にするために外国為替資金を置き、その運営に関する経理を明確にすることを目的とする」とあり、資金とは政府による売買を円滑にするために置いていると記載されています。津田:例えば、国債整理基金も、国債整理基金という特殊な名称を持つ「資金」です。また、財政融資資金も外国為替資金も「資金」です。その他、様々な「資金」があります。これらの特会は資金を経理するために設定されています。服部:確かに、国債整理基金特別会計についても、「国債整理基金特別会計は、国債の償還及び発行を円滑に行うための資金として国債整理基金を置き、その経理を明確にすることを目的とする」と説明されており、書きぶりは外為特会と似ていますね。津田:ここで、財政法上の資金とは何かを説明します。まず、国の資金については歳出ないし歳入として計上するという歳入歳出総計主義という原則があります。特別会計も例外ではなく、一般会計と同じように、歳出と歳入があります。そして、特別会計は、特に歳出について国会での議決を経て、その範囲内でだけお金を使えることになります。一方、前述の「資金」は、資金の受払を歳入歳出外で処理することが特徴です。一例として国債整理基金で考えると、国債の発行による収入金が入ってきますし、国債の償還日が来たらその基金から償還します。この基金がそれらの取引を行っており、そのお金の動きのうち、歳出と歳入に該当するも日本の国庫制度については、その概要を明らかにした文献は必ずしも多いとはいえません。国庫制度を理解することは、国の資金の流れを正確に把握するだけでなく、短期金融市場の実務や金融政策等を的確に理解する上でも不可欠です。日銀が有する「政府の銀行」としての機能は国庫金に係る制度そのものと言っても過言ではありません。そこで本稿は、国庫課課長の津田課長との対談を通じて、国庫制度およびその業務についての理解を深めることを目的としています*1。服部:特別会計(特会)について理解が難しいものとして、「資金」の概念があります。例えば、外為特会をみていると、外国為替資金という概念が出てきます。また、後ほど政府預金の話をしますが、そこでも資金*1) なお、本対談は 2025 年 6 月に実施されており、以下における肩書や組織名は2025 年 6 月当時である点に注意してください。また、本稿を記載するにあたり、安斎由里菜さんと新田凜さんの協力を得ました。2002 年、東京大学法学部卒業後、財 務 省 に 入 省。 国 際 通 貨 基 金(IMF)金融資本市場局審議役、財務省理財局国庫課長兼デジタル通貨企画官を経て、2025 年 7 月より現職。2009 年コロンビア大学 MBA 修了。2008 年、一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了後、野村證券に入社。2016 年、財務省財務総合政策研究所を経て、2020 年に東京大学に移籍し、現在に至る。経済学博士(一橋大学)を取得。津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(後編)
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