ファイナンス 2025年11月号 No.720
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SPOT(「ジュネバ国際聯盟本部」 出典:石丸藤太 著『ジェネバ軍縮会議へ』, 春秋社 , 昭和 6. 国立国会図書館デジタルコレクション ジェネバ軍縮会議へ - 国立国会図書館デジタルコレクション)(1)海軍軍縮交渉 18 ファイナンス 2025 Nov.「會議の成否を決する 佛伊両國の態度 日英米三國のみの協定には日本は絶対に反対」〔2.12 東朝〕は「米国大統領の補助艦潜水艦の建造を制限せんとするの提義は列強それぞれの立場と主張があつて新協定の成立までには尚数多の曲折があるものと見られるが、日、英、仏、伊五カ国の立場は大体左の通りである。日本 現在の状態においてもつともよく平和が維持されているのでこの上進んで軍備制限条約を締結する必要に迫られていないが、補助艦制限の提議が純正なる動機と公正なる比率で行われるならばいつでも喜んで参加する、…若し仏伊を除外して日、英、米三国だけで補助艦制限の協定を行ふといふならば全然反対である。…」の記事。「壽府軍縮會議の幕 いよいよ切って落さる 先づ米大統領へ感謝の電報」〔6.21 東日〕は「日英米三国軍縮会議は廿日午後三時十分予定の通りジュネーヴ国際聯盟本部サル・ヴイトル(硝子の間)に開かれた、…斎藤全權は三国軍縮会議の名を以つて米国大統領カルヴイン・クーリッヂ氏に対し感謝の電報を送るべきことを提議するや、…右電防は即時クーリッヂ氏に発信された。」「全部の補助艦艇に 五・五・三の比率を適用 米國全權から提案」は「米国首席代表ギブソン氏は今回の補助艦艇制限に対する米国の提案を提出した、其の内容は左の如く英、米、日三国に対し全部の補助艦艇制限に五・五・三の比率を適用せんとするものである。」「米國の高飛車的提案は我が全權に甚大な衝動 會議散會後直ちに引き返して 英米案の比較研究に着手す」〔6.22 東朝〕は「…イギリス、アメリカ側の主張に対する日本の態度及び意向を総合するに大体予想したところとはいへ、相当大きなショックを与へられ会議散会後我が全権以下各随員は直に事務所に引返して英米案の内容を比較研究すると共に、これが対策を協議して居る、…日本側では英米の主張と日本のそれとの間には、相当な距離があり、これが一一致点を見出すまでは、尚幾多の困難があるものと見て居る、…」。「水上補助艦八十萬トン 軍縮を裏切る英國の要求 英米同比率を新たに提案す 日米両国は猛烈に反対せん」〔7.2 東朝〕は「英国首席全権ブリツヂマン氏は、二十九日夜…英国は米国に対し優越なる海軍勢力を保有せんとする意志はない各艦種につき英米同等の五対五でゆく意向であるとの意味を示した。…それは軍備縮少の提唱者たる米国は容易に聞きいれそうにない。また日本の立場から見てももし英国が米国と共に八十万トン以上の補助艦を欲することとなれば、日本も当然これに準じて海軍力を増加せねばならぬ、…日本は到底賛成しえないところだから米国の主張を支持…もし英国案が通過すればこの会議は軍備制限会議にあらずして軍備拡張会議となり実に奇怪至極な結果となるからである。」。「専門事項承認の後 三國全權重要協議に入る 潜水艦を日本は七萬噸 英国は十一~二萬噸」〔7.9 時事〕は「…更に三国案について重要なる協議を始めたが、…今まで極秘に附せられていた潜水艦に対する英国の要求…の探知する所に拠れば…五―五―三を求めて居ることになる、潜水艦については我主張を譲歩してあるから五―五―三には飽くまで反対す可きである、尚ほ幹部会の内容は不明であるが今日は大体の意見交換に終わると思はれる。」。「妥協案は撤回せよ 我全權にきつい訓電 これでは面目丸潰れとなる 英國の手に乗った我代表 會議は再びやり直しに」〔7.19 東日〕は「軍縮会議はジユネーヴにおいて日英両全権間に左の妥協案が出来わが齋藤全権は本国政府に請訓してきた…わが海軍首脳部は直ちに会議を開き齋藤全権に回訓したが、此の回訓は確聞するところによればこれまで伝へられて居るが如き生温かきものとは全然異なり我が政府は全く反対の態度に出て、これがため齋藤全権の位置は頗る苦しきものとなついて居る、…日本としては面目の丸潰しである宜しく之を撤回して新たにやり直せといふにあつて…会議は今は日本の妥協案の棄却と米国の反対のために

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