ファイナンス 2025年10月号 No.719
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マネー・ローンダリング/テロ資金供与/拡散金融(以下「マネロン等」)対策に関する国際基準の策定・履行を担う多国間の枠組みとして、金融活動作業部会(FATF、Financial Action Task Force)が存在している注1。もっとも、FATF の加盟メンバーは 38 の国・地域と 2 つの地域機関(欧州委員会< EC >・湾岸協力理事会< GCC >)に過ぎず、FATF 基準のグローバルかつ効果的な履行に向けては、FATF メンバー以外のマネロン等対策の強化も欠かせない。こうした観点から、FSRB(FATF-Style Regional Bodies)と呼ばれる 9 つの地域体が FATF と連携し、マネロン等対策を推進することによって、FATF 基準が(FATF に加盟していない法域を含む)世界 200 以上の国・地域に適用されている。FSRB のうち、日本を含むアジア・太平洋地域は、APG(Asia/Pacific Group on Money Laundering:アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ)がカバーしている。APG は 1997 年に設立され、東京総会は、8 月 25 日~29 日の 5 日間、お台場(ヒルトン東京お台場)にて開催され、40 以上の国・地域や国際機関から約 450 名が参加し、アジア・太平洋地域におけるマネロン等対策強化に向けた議論が行われた注4。27 日の本会合冒頭には、ホスト国からの開会挨拶として、加藤財務大臣による開会挨拶がなされた。APG 年次総会は、加盟国・地域による意思決定の場であり、APG の運営方針や相互審査等を議論することが中心となる。ただし、今回の東京総会は、日本の共同議長下かつ日本での開催ということを踏まえ、日本の共同議長優先事項に関するパネル・セッションやセオーストラリア(シドニー)に本部を置く。地理的・経済的にも多様性に富んだ 42 の法域注2 が加盟する、最大の FSRB である。APG の共同議長は、常任共同議長(オーストラリア)と交代制共同議長(任期約 2 年)の 2 名からなる。昨年 9 月、アブダビで開催された APG 年次総会をもって、財務省国際局の梶川光俊審議官が APG の交代制共同議長に就任した。日本は、この 1 年、(1)次期相互審査に向けた準備、(2)太平洋島嶼国等への能力開発支援の強化、(3)金融新技術(暗号資産等)への対応、という、同総会にて掲げた共同議長優先事項の「3 つの柱」注3 に関する取組を積極的に行うとともに、共同議長としての義務である、APG 年次総会のホストに向けて準備を進めてきた。本稿では、本年 8 月 25 日~29 日の 5 日間、東京で開催された 2025 年 APG 年次総会(以下、東京総会)の模様とその成果を紹介したい。ミナーも開催された。議論内容自体は非公表のため詳細までは述べられないものの、日本のプレゼンスが随所に発揮された取組であったことから、紹介致したい。ファイナンス 2025 Oct. 3会合冒頭、開会挨拶を行う加藤財務大臣会合冒頭、開会挨拶を行う加藤財務大臣注1) 注2) 注3) 注4) 東京総会の様子は、以下 APG の HP 参照(https://apgml.org/news/2025-apg-annual-meeting-tokyo-japan) マネロン等対策の概要に関しては、例えば以下財務省の HP「教えて!マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策」等を参照(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/amlcftcpf/2.measures.html) APG の加盟法域は、アフガニスタン、豪州、バングラデシュ、ブータン、ブルネイ、カンボジア、カナダ、中国、クック諸島、フィジー、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マカオ、マレーシア、モルディブ、マーシャル諸島、モンゴル、ミャンマー、ナウル、ネパール、ニュージーランド、ニウエ、パキスタン、パラオ、パプアニューギニア、フィリピン、サモア、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、台湾、タイ、東ティモール、トンガ、ツバル、米国、バヌアツ、ベトナムの 42 法域。 共同議長優先事項やアブダビでの年次総会の様子を含む、我が国の APG 共同議長就任に関しては、令和 6 年 11 月号のファイナンスを参照(https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202411/202411e.html)特集APG年次総会の 東京開催の模様とその成果 1. はじめに2. 東京総会の様子

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