ファイナンス 2025年10月号 No.719
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連載各地の話題 白雲台朱鷺ロード佐渡は食の宝庫佐渡市が行われシックナーと呼ばれる巨大な装置では、1 か月に 5 万トンを超える鉱石を処理できたといいます。その規模は当時「東洋一」と呼ばれるほどでした。いまでは、コンクリートむき出しの建物跡が緑の蔦に覆われ、時間の流れを物語る幻想的な風景が広がっています。耳を澄ませば、風が吹き抜ける音とともに、かつて機械が動いていた頃の響きが聞こえてくるようです。写真愛好家にも人気のこの場所は、産業遺産でありながら、どこかアートのような趣を漂わせています。佐渡の中心にある金井町から相川町へと続く、全長30 キロの絶景ルート「大佐渡スカイライン」。その中間地点の標高 850 メートルに建つ山小屋風の展望施設が「白雲台」です。展望デッキに立つと、青く輝く海や緑豊かな山々、小さく点在する集落の屋根まで、広大な佐渡の景色を一望できます。晴れた日には、新潟の山並みもはっきりと見渡せます。さらに、近くには航空自衛隊の固定式警戒監視レーダー、通称「ガメラレーダー」もあります。青空に映える大きな白い球体は、写真映えするスポットとしても人気です。2008 年 9 月の試験放鳥から 15 年以上が経ち、佐渡の空には再び朱鷺の姿が戻ってきました。今では野生下で 500 羽を超える朱鷺が生息しており、島の中心部である国中平野一帯を中心に広く分布しています。国道 350 号バイパスを車で走っていると、運が良ければ淡いピンク色の羽を広げ、優雅に空を舞う朱鷺の姿を目にすることもあります。さらに、新穂地区にある「トキの森公園」では、朱鷺の保護や野生復帰の取り組みをわかりやすく学べます。「トキふれあいプラザ」では、飼育されている朱鷺を至近距離で観察でき、野生とはまた違う表情をじっくり堪能できるのも魅力です。大佐渡には計 45 地区の漁港があります。ここで揚がる魚は、とにかく鮮度が抜群です。身の締まったブリ、高級魚の赤ムツ(のどぐろ)、海外で「マヒマヒ」と呼ばれるシイラ。さらにタイ、スルメイカ、南蛮エビ、サザエと、まさに海の宝庫です。朝〆の刺身は脂がのり、醤油を弾くほど。ひと口で口いっぱいに旨味が広がります。米どころとしても佐渡は有名です。国中平野 6,000 ヘクタール(東京ドーム1,300 個分)の田んぼで育つコシヒカリは、しっとりとした甘みと上品な香りが評価され、国内外から高い評価を得ています。その米で造る日本酒も逸品ぞろいです。5 つの蔵元が、きりっとした飲み口からどっしりとした旨味の酒まで、幅広く醸造しています。酪農・畜産も負けていません。幻と呼ばれる佐渡牛は、旨味が濃く肉質も柔らかです。牛乳はすっきりとした口当たりに上品な甘みとコクがあり、そこから作るバターやチーズは極上の味わいです。果物の栽培も盛んです。おけさ柿、西洋梨ル・レクチェ、苺の越後姫。さらにリンゴ、イチジク、キウイ、レモンまで、多彩な味覚を楽しめます。佐渡は魚も米も肉も果物も、すべてが一級品です。その豊かさと確かな品質は、訪れる人々を魅了してやみません。ファイナンス 2025 Oct. 45佐渡のラピュタと呼ばれています「トキふれあいプラザ」にて筆者撮影

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