G無意味・無益な調査※資源・労力・時間の浪費Cおたく型※夢中になれるS実務型※人の役に立つ象牙の塔型※学界でほめられる(出所)佐藤郁哉(2024)『リサーチ・クエスチョンとは何か?』(ちくま新書)を「社会の関心」(S)、「学界の関心」(A)の 3 領域に問C や A に偏っているのではないかと思います。行政と(Z)を目指すのが理想かと思いますが、その実現の向けて」ですが、実際には行政とアカデミアの問題関心・方向性にはズレが生じているのではないかと思います。図 2 はある社会学者の方が、「個人的関心」(C)、題関心を整理したものです。これに照らして考えると、行政の関心は S である一方、アカデミアの関心はアカデミアが一緒になって、両者の関心が重なる領域ためには何が必要でしょうか?宮本)行政とアカデミアのインタラクションが大事だと思います。私の恩師である島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授)は、「経済学は世の中を良くするためのツールである」と常におっしゃっていました。そのためには、単に論文を書くだけでなく、政策の現場を理解しなければならない、と。まさにそのとおりだと思います。研究者は政策現場のニーズを知らなければならないし、逆に行政官も、「アカデミアではここまでのことが解明されている」という認識があれば、それを政策に取り込むことができます。私は以前 IMFで働いていましたが、そこでは世界的に著名な学者が毎週のように訪れ、セミナーや研修を行っていました。世界のアカデミアのトップランナーたちが、「最先端の研究はこうです」、「この知見は実務にこう応用できます」というような話をしてくれるのです。その一方で、彼らは、国際機関や政府のスタッフから、実務サイドが抱えているニーズや課題を聞き、新たな研究のテーマを見つけるのです。私も財務総研に来て、行政とアカデミアのこうした双方向のやり取りが、お互いに良い刺激を与え合い、視野を広げることを実感しています。米国の場合はそこに経営者も加わって、経営者、行政官、研究者が、「回転ドア」のように行ったり来たりする、という仕組みが上手く機能していましたが、まだ日本では、そういった仕組みが十分に機能していないように思います。大西)おっしゃるとおり、日本では行政とアカデミアのインタラクション、特に研究者の方が行政の中に入ってくるようなケースは、非常に少ないのではないかと思います。財務省でも、かつては伊藤隆敏先生(元・コロンビア大学教授)や河合正弘先生(東京大学名誉教授)が副財務官を務められたことがありましたが、どうすればこのようなインタラクションを活性化できるのでしょうか?安田)まずは、ロールモデルを作ることが重要だと思います。欧米では多くの経済学者が、経済学の専門知を政策に役立てたいと考えて、実際に政府や企業などで活躍しています。日本にも、潜在的にそういう意欲や能力を持った研究者はたくさんいるはずです。「鶏が先か、卵が先か」という問題がおそらく生じていて、行政に入って活躍する人が出てくると、それを目指す若い人たちも増える。そうやって母数が増えると、結果的に活躍する人がまた増える、というような好循環が生まれていくのではないでしょうか。宮本)情報をオープンに出し合うことが必要だと思います。行政の側からも研究者に対して、「こんなテーマに取り組んでほしい」、「こういう分析はできないか?」といったニーズを具体的に出す。一方で研究者も、「これならできる」、「こういうアプローチが可能だ」と応えていく。そうしたやり取りがあってこそ、知が活きてきます。その際に、財務総研のような行政内部の研究機関が「ハブ」として、ニーズとシーズをつなげる役割を果たせると良いのではないかと思います。片野)安田先生や宮本先生よりも、さらに若い世代の研究者の方々に、行政での業務に興味を持っていただくということも、今後の行政側の課題であると認識して 38 ファイナンス 2025 Oct.社会の関心もとに作成個人的関心学界の関心図 2 問題関心の 3 領域YXZAW連載PRI Open Campus
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