連載海外経済の 潮流軽希土類を取扱い中・重希土類を取扱い(4)中国当局による徹底的な管理5.日本におけるレアアース調達6.おわりに(出典)各種報道を基に作成ベトナム2,688 トン(32.2 %)ベトナム545 トン(9.9 %)2005 年8,387 トン中国8,385 トン(100.0 %)タイ401 トン(4.8 %))(注)希土類金属、スカンジウム及びイット2024 年8,335 トン(出典)日本貿易統計中国5,246 トン(62.9 %)米国15 トン(0.3 %)2010 年5,487 トン中国4,926 トン(89.8 %)レアアース・ショック発生リウム(HS コード : 280530000)2023 年 12 月2024 年 1 月~中国北方稀土集団中国北方稀土集団中国稀土集団中国稀土集団広東省稀土産業集団2016 年~2021 年 12 月中国北方稀土集団中国北方稀土集団中国稀有稀土五鉱稀土中国稀土集団贛州稀土集団厦門 業厦門 業広東省稀土産業集団広東省稀土産業集団規制の緩い中国が同工程での覇権を握った。各国はサプライチェーン上で中国を通る必要があり、供給経路を多角化することが難しい状況にある。中国がレアアースの戦略物資としての地位を強めてきた軌跡は、鄧小平氏が最高指導者を務めた 1980 年代まで遡る。鄧小平氏はレアアースを戦略物資として位置づけ、国家一丸での生産、技術開発が急激に行われた。鄧小平氏はレアアースについて、「中東有石油、中国有稀土、一定把我国稀土的優勢発揮出来(中東には石油があり、中国にはレアアースがある。中国はレアアースによって優位性を発揮できる。)」と評している。中国当局は国内の業界再編にも力を入れた。大手国有企業への事業集約を図り、2024 年には北方稀土と中国稀土の 2 大体制への再編を完了させている。業界の再編には、過剰競争を是正するほか、中国当局によるレアアース業界の管理が容易になるというメリットがある。また中国当局は、レアアースを徹底的に保護した。前述したとおり、中国は早い段階でレアアースを戦略物資として位置づけ、レアアースの取引規制を強化している。足元では 2024 年 6 月 29 日に、「レアアース管理条例」が公表された*7。レアアースに関する一連の活動に対して統制を強化する内容となっている。まし、レアアースや派生製品を買いだめしないように警告しているとの報道もある*8。中国は、国家単位での徹底的な管理と保護によってレアアースの戦略物資としての優位性を高め、現在もその舵を握っている。日本におけるレアアース調達については、【図表 7】のとおり。日本は当初、レアアース輸入のほとんどを中国に依存していたものの、2010 年に中国がレアアースの対日輸出を停止したとされる「レアアース・ショック」*9 が発生して以降は、輸入元の分散化を進めてきた。しかし、元々100%あった中国輸入を他国に置き換えるのは容易ではなく、2024 年時点でも中国は最大の輸入相手国となっている。中国依存からの脱却を目指し、日本は 2026 年 1 月、日本最東端の南鳥島沖海底に眠るレアアースの試験掘削に着手する予定である*10。国産資源の開発に期待が集まる。本稿では、レアアースを巡る米中対立を振り返り、レアアース供給網における中国の圧倒的な支配力、戦略物資としての重要性を確認した。ハイテク産業の発展を進めていきたい日本にとって、川上に位置するレアアース確保への取組も一段と強化する必要があるが、レアアース生産による環境汚染も無視できない。レアアースに依存しない製品の開発や環境汚染を軽減する技術等、現時点では実現不可能な構想も今後はしていかなければならない局面にあるのかもしれない。(注)文中、意見に及ぶ部分は筆者の私見である。 また、誤りについては筆者に帰する。た 6 月の米中合意後においても、中国が外国企業に対 30 ファイナンス 2025 Oct.中华人民共和国国务院令 第 785 号 稀土管理条例*7) 中国国務院「*8) FINANCIAL TIMES “China cracks down on foreign companies stockpiling rare earths” (2025 年 8 月 15 日)*9) 中国政府による公式発表はなく、日本のメディアが伝聞形式で報道した。*10) 日本経済新聞電子版「南鳥島沖レアアースを 26 年 1 月試掘へ 海洋機構、国産資源開発狙う」(2025 年 7 月 1 日)」(2024 年 6 月 22 日成文)【図表 6】レアアース生産企業再編の動き【図表 7】日本の国別レアアース輸入
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