ファイナンス 2025年10月号 No.719
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444連載海外経済の 潮流 コラム 海外経済の潮流 157(2)採掘生産(3)精錬(1)埋蔵量3. 中国レアアース輸出規制のインパクト4. レアアース供給網における中国の 存在感(注)各国のシェアは埋蔵量全体を 9,000 万トンと仮定して算出(出典)USGS"Mineral commodity summaries 2025"(出典)USGS"Mineral commodity summaries 2025"(出典)IEA"Global Critical Minerals Outlook 2025"【図表 3】レアアースの国別埋蔵量(2024)ロシア380 万トン(4.2%)【図表 4】レアアースの国別生産量(2024)【図表 5】レアアースの国別精錬シェア(2024)ベトナム(1%)オーストラリア570 万トン(6.3%)その他(9.6 %)インド690 万トン(7.7%)ブラジル2,100 万トン(23.3%)ミャンマー3.1 万トン(7.9%)その他(11.3 %)米国4.5 万トン(11.5%)マレーシア(4%)中国(91%)中国4,400 万トン(48.9%)(参考)米国190 万トン(2.1%)中国27 万トン(69.2%)その他(3%)ファイナンス 2025 Oct. 29世界合計9,000 万トン以上世界合計39 万トン*5) CLEPA「Urgent action needed as Chinaʼs export restrictions on rare earths disrupt European automotive supply chains」(2025 年 6*6) CSIC「Trump Strikes a Deal to Restore Rare Earths Access」(2025 年 6 月 11 日)中国のレアアース輸出規制は、輸出数量に上限を設ける規制ではないものの、4 月上旬以来、中国当局に提出された数百件の輸出許可申請のうち、承認されたのはそのうちの 25% 程度であった*5。輸出手続きが滞ったことにより、世界各国に影響が発生した。米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の解説*6によると、中国によるレアアースの輸出許可の発行遅延は、米国、欧州、日本の企業、特にエンジンと電気自動車の両方にレアアースを使用する自動車メーカーに重大な影響を与えている。複数の自動車メーカーが供給の混乱や生産停止を報告しており、米国のフォードは、レアアースの不足により、5月にシカゴ工場でのフォード・エクスプローラーの生産を1週間停止した。また欧州では、複数の自動車工場と生産ラインが停止した。日本の自動車メーカー、日産とスズキも、供給の混乱を報告しており、スズキはスイフトの生産を一時停止した。こうした各国へのインパクトの大きさは、レアアース供給網における中国の圧倒的な存在感が背景にある。そもそもレアアースとは、合計 17 種類の元素の総称を指す。採掘や精錬が困難であることから安定供給が難しく、レアアースや希ている。レアアースはハイテク産業において不可欠な資源となっており、前述した電気自動車やバッテリーのほか、クリーンエネルギー技術、スマートフォンやコンピュータにも使用される。その需要の高さから、レアアースは米中貿易摩擦の中で重要な戦略物資としての側面を持つようになった。レアアースの供給網における中国の存在感について、ポイントを絞って確認していく。米地質調査所(USGS)によると、中国のレアアース埋蔵量は世界第一位で、全体の 48.9% を占める。米国は 2.1% と相対的に小さい。採掘部門でも中国が全体の 69.2% を占める。米国は比較的少ない埋蔵量ながら中国に次ぐ 2 位の採掘国となっている。中国の圧倒的な支配力として、最も着目すべきは精錬能力だ。中国は世界のレアアース精錬の約 9 割を担っている。精錬過程では、大量の環境汚染物質が発生するが、各国が環境規制を強める中で、比較的環境土類といった呼ばれ方をし月 4 日)

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