ファイナンス 2025年10月号 No.719
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52025国コラム連載海外経済の 潮流公表日米国 2 月 1 日 中国からの輸入品にフェンタニル関税 +10%中国 2 月 4 日 米国産石炭・LNGに+15%、原油・自動車等に+10%関税米国 3 月 3 日 中国へのフェンタニル関税を更に +10%(計 +20%)中国 3 月 4 日 米国産鶏肉・小麦など一部品目に最大 +15% 関税米国 4 月 2 日 中国への相互関税 +34%中国 4 月 4 日 レアアース関連品目で輸出規制米国 4 月 9 日 中国への相互関税 +125%中国 4 月 11 日 米国への報復関税 +125%米国5 月 12 日中国3020100▲10▲20▲30▲401 35 7 9 11 1 32022実施内容中国への相互関税 +91% 分を撤廃、残りの +34% のうち、24% 分について 90 日間の一時停止(フェンタニル関税と計 +30%)米国への報復関税 +91% 分を撤廃、残りの +34% のうち、24% 分について 90 日間の一時停止(個別品目への関税は維持)5 7 9 11 1 32023」(2025 年 4 月 4 日)1.はじめに2. 第二次トランプ政権下における米中対立の動向とレアアース輸出規制財務省大臣官房総合政策課 渉外政策調整係 廣元 未希5 7 9 11 1 32024(注)両国の発表や各種報道より一部抜粋(出典)米ホワイトハウス、中国商務部、各種報道(出典)CEIC, 中国海関総署2025 年に入り、第二次トランプ政権による対中措置が苛烈を極める中、中国政府は、レアアースの輸出規制を実施した。同措置の影響で、レアアースを使用する自動車部品の調達が滞り、日本の自動車メーカーは一時、生産停止に追い込まれた*1。米中対立の動向が両国のみならず 日本、ひいては 世界の サプラ イチェーンに波及している。本稿ではレアアースを巡る米中対立を振り返り、レアアース供給網における中国の圧倒的な支配力、戦略物資としての重要性を確認して参りたい。米国では第一次トランプ政権が発足した2017年以降、中国を念頭においた通商上の様々な措置が取られている。第二次トランプ政権では対中措置が更に苛烈になり、米国は一時、計145%もの関税を中国製品に課していた。対して中国は対抗措置として米国製品への報復関税を発表したほか、2025年 4月、レアアース関連品目の輸出規制を公表、即日実施した*2。輸出規制の対象となったのは、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7 種の中・重希土類レアアースの関連品目で、中国の輸出業者はこれらの対象品目を輸出する場合、中国国務院商務主幹部門(商務部)に許可申請を行う必要が生じる*3。中国の貿易統計から、足元の中国によるレアアース輸出の推移を確認したところ、【図表 2】のとおり、輸出規制が実施された 2025 年 4 月は、前年同月比▲量は大幅に下落した。こ う し た 事 態 を 経 て、5 月 10 日、11 日 に は ス イス・ジュネーブにおいて米中協議が行われ、両国は100% 超の関税をお互いに一部撤廃し、また残った追加関税の一部は 90 日間停止することで合意した。またその後、6 月 9 日、10 日に英国・ロンドンで再度米中協議が実施され、レアアースの輸出規制を緩和する方向で合意がなされた模様だ*4。苛烈を極めた米中対立から一転、緊張緩和への一歩を踏み出した両国だが、強硬姿勢を強めていた米国にとって、中国のレアアース輸出規制はどれだけ大きなインパクトだったのか、次項で確認していく。19.1%、続く 5 月は同▲ 31.1% と、レアアースの輸出 28 ファイナンス 2025 Oct.海关总署公告 2025 年第 18 号 公布对部分中重稀土相关物项实施出口管制的决定*1) NHK 報道「スズキ「スイフト」生産停止 中国のレアアース輸出規制受け」(2025 年 6 月 5 日)*2) 中国商務部「*3) 日本貿易振興機構(Jetro)「中国、中・重希土類 7 種のレアアース関連品目で 4 月 4 日から輸出管理を実施」(2025 年 4 月 7 日)*4) 合意の詳細は明らかになっていないものの、トランプ大統領は SNS において、レアアースが中国によって供給される旨を投稿した。【図表 1】5 月 12 日米中合意までの動向【図表 2】中国の対世界レアアース・関連製品 輸出量(t)の推移(前年同月比、%)海外経済の潮流 157戦略物資としての側面を得た 中国産レアアース

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