連載経済トレンド※令和 6 年 9~11 月にて計 6 回実施※参加者人数 ・観光客 :1,524 人(うち外国人観光客 431 人) ・運営スタッフ 51 人(延べ数)オーバーツーリズムの社会問題化オーバーツーリズムに対する取組み事例大臣官房総合政策課 調査員 伊藤 祐嗣/日比野 聡太本稿では、オーバーツーリズムの課題や対策を整理したうえで、観光産業を活かした地方創生のあり方について考察する。<影響>・地域性と訪問客のミスマッチ、地域の魅力低下・家賃や物価の上昇、住民の活力低下・抗議活動、人口減少(万人)4,0003,0002,0001,000020兆円15兆円10兆円5兆円0兆円(注)図表 1 について、2020~22 年の訪日外国人旅行消費額は、観光庁による試算値。図表 3 について、三大都市圏とは、「東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵(出所)日本政府観光局「訪日外客統計」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」「インバウンド消費動向調査」「令和 7 年版観光白書」、財務省「貿易統計」、トラベルボイス株式会・北海道倶知安町・北海道美瑛町・青森県・山形県山形市・山形県尾花沢市・新潟県佐渡市・山梨県・山梨県大月市・岐阜県高山市・岐阜県白川村(出所)観光庁「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業「先駆モデル地域」における取組み事例集(令和 7 年 7 月 25 日第一版)」、Bing(兆円)1086420(年)その他 16.0%福岡県 4.2%沖縄県 4.5%北海道 5.9%23 24<定義>特定の時間や場所に、観光客が受入許容範囲を超えて来訪することで地域に負荷をかける現象<要因>・都市への人口偏重・シェアリングエコノミー拡大(民泊の増加)など・SNS による情報伝達の変化非鉄金属電気回路等の機器【年間観光客入込数(令和 5 年)】・奈良公園エリア:約 1219.9 万人 ・山の辺の道エリア:約 29.7 万人【具体的な取組み内容】・山の辺の道エリアの周遊ルート造成、デジタルマップ作成およびブランディング・山の辺の道エリアにおける二次交通整備・地域住民等と協業した山の辺の道エリアの参加型ツアーの実施⇒山の辺の道エリア全体の訪問者数の増加 令和 7 年 1 月訪問者数:25,856 人(前年同期比 118%)【具体的な取組み内容】・観光客参加型のクイズ大会を開催し、クイズを通じて地域ごとの歴史やマナーを啓発「オーバーツーリズム」とはその他 8.8%東京都35.0%京都府10.2%大阪府15.5%など奈良公園エリア奈良市天理市山の辺の道エリア桜井市イベント満足度:日本人・外国人観光客ともに 100%⇒観光客を巻き込み、宮島の歴史・ 文化やマナー啓発を実施。 サステナブル観光の意識醸成を 図る。訪日外国人旅行者数(左軸)2011 12131415168.1 兆円自動車(完成品)観光 半導体等電子部品半導体等製造装置庫」の 8 都府県をいう。社「オーバーツーリズム 2025」・静岡県・奈良県・和歌山県高野町・島根県出雲市・広島県廿日市市・香川県小豆島町・高知県いの町・熊本県阿蘇市・沖縄県・沖縄県竹富町訪日外国人旅行消費額(右軸)171819202122鉄鋼 自動車の部分品プラスチック原動機 科学光学機器・埼玉県川越市・埼玉県秩父市・東京都台東区・神奈川県鎌倉市・神奈川県箱根町・京都府京都市総数16,360 万人泊地方部30.6%三大都市圏69.4%三大都市圏(全 6 地域)地方部(全 20 地域)・我が国においては、近年のインバウンドの活況等を背景として、観光産業の存在感が高まっている。訪日外国人の旅行消費額は 2024 年に約 8.1 兆円と、主要製品の輸出額と比較すると自動車に次ぐ規模となっている(図表 1、2)。・観光は地方創生への貢献も見込まれる。その地域独自の観光資源を活かして魅力を高めることで、消費の拡大や雇用の創出等、地域経済の活性化に繋がる。現状、外国人の延べ宿泊者数は三大都市圏で全国の約 7 割を占めているが、今後は地方圏にまで宿泊先(旅行先)が広がっていくことが期待される(図表 3)。・他方、近年は「オーバーツーリズム」が社会問題となっている。観光による経済利益の追求と、地域の自然環境や生活の維持を、どのように両立させていけばよいか、事例を交えながら考察していく(図表 4)。・オーバーツーリズムは大都市圏だけでなく、地方部でも課題が顕在化してきている。観光庁の令和 5 年度補正予算「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光地域づくり事業」においては、オーバーツーリズムの課題を抱える全国 26 の地域を先駆的な取組みを行うモデル地域として採択しており、20 の地域が三大都市圏以外の地方部となっている(図表 5)。・具体例を見てみると、奈良県では、奈良公園エリアに国内外の観光客が集中し、主要スポットへの人流の集中による混雑やマナー違反が課題となっている。これに対し同県では、サイネージや WEB 等で混雑状況をリアルタイムで配信、二次交通の整備や奈良県内他エリアの観光振興等により、人流を分散・平準化、混雑の緩和に取り組んでいる(図表 6)。・宮島で有名な広島県廿日市市では、観光客の増大やごみのポイ捨て・餌づけなどのマナー違反等により、自然・文化財の保全・継承の妨げ、島内の鹿の健康被害が課題となっており、観光客への観光マナー啓発・PR 活動を行っている(図表 7)。 26 ファイナンス 2025 Oct.(図表 6)奈良県の人流分散事例(図表 2)インバウンド消費額の製品別輸出額との比較(2024 年)(図表 1)訪日外国人旅行者数と訪日外国人旅行消費額(図表 5)先駆的モデル 26 地域(令和 5 年度補正予算)(図表 3)外国人延べ宿泊者数(都道府県別、2024 年)(図表 4)オーバーツーリズムの社会問題化(図表 7)広島県廿日市市のマナー啓発事例136オーバーツーリズムと地方創生コラム 経済トレンド
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