国庫収支○○×○××SPOT 調整項目(注)○印は増減がある場合を,×印は増減がない場合を示す。(出所)財務省*12財政資金対民間収支(出所)財務省国庫対民間収支国庫対日銀収支国庫内振替収支政府預金増減通貨量増減ファイナンス 2025 Oct. 19代 理 店 預 け 金財 政 資 金対民 間 収 支国 庫 送 金 等 調 整政府関係機関調整の流れを考えると、民間からの資金は民間銀行等を通じて、まず日銀に集約されて、政府預金に入ってくるからです。津田:それは政府の銀行としての日銀ですよね。政府の銀行としての日銀は、この破線の枠の中として表現されています。国庫の全ての口座は、日銀にあります。言わば日銀という巨大な箱の中に、国庫が収まっているというイメージです。この資料自体は国庫収支の説明を目的としているため、このように表現されています。服部:国庫対民間収支の概念について確認しましたが、次に、前半で議論してきた「財政資金対民間収支」に話を進めていきたいと思います。図表11が国庫収支を、「財政資金対民間収支」に変換したものです。この図も、国庫関係の資料をみると、頻繁に出てくる図です。先ほど、国庫収支は(1)国庫内振替収支、(2)国庫対日銀収支、(3)国庫対民間収支の 3 つに分解されると説明されましたが、図表 11 でもこの 3 つの合計が国庫収支全体になっていることが分かります。この中で、国庫収支の中で、国庫対民間収支を取り出して一定の調整を加えたものが財政資金対民間収支です。財務省のウェブサイトでは、「対民収支」とも略されます。図表 11 に「調整項目」がありますが、これは主に時期のずれに関する調整と、日本政策金融公庫など国庫預託義務を有していない公的金融機関の影響の調整を行うものです*10。まず、財政資金対民間収支の解釈について議論していきたいです。結論としては、国庫対民間収支を財政資金対民間収支に変換している目的は、国庫収支の中から、金融市場や金融政策などで関心が高い、マネーに影響を与える部分を切り出すためと解釈できると思います*11。津田:日銀との関係でも、当然、政府預金の量は変化するわけですが、当然それは日銀と政府の中の相対の取引なので、マネタリーベース自体に影響を与えませんよね。つまり、対日銀収支は政府預金を増減させる一方で、マネタリーベースには影響がありません。また、国庫内振替収支は、政府預金内の処理なので、政府預金にもマネタリーベースにも影響がありません。対民間収支は、政府当座預金だけでなくマネタリーベースも増減させます。その意味で、財政資金対民間収支はマネタリーベースに影響を与えるものを切り出しているというわけです。服部:日銀のマネタリーベースの定義の中に政府預金は含まれませんよね。このようにしてみると、マネタリーベースはあくまで民間に出回っているマネーに焦点を当てたいため、定義として政府預金が含まれていないと解釈することができます。津田:対民間との受払いが発生すると、金融政策上の意味が出てきます。例えば T-Bill を発行してお金を集めると、市中のお金の量が減り、金融引き締めになります。それを避けるために、日銀は少し国債を買い戻して、資金供給を行うなど、金融調節をする必要があります。この動きに着目したのがこの財政資金対民間収支です。*12(注)なお、その後に行われた公的金融機関の統廃合を踏まえ、現在は、日本政策金融公庫、国際協力銀行が「調整項目」に計上されています。*11) 大内(2005)では、国庫対民間収支について、「財政資金対民間収支に、国庫金の受払いが金融市場に及ぼす影響を加味すべく所要の調整を行ったものが財政資金対民間収支(「対民収支」とよばれる)」と説明しています。*10) 大内(2005)では調整項目として下記を記載しています。(1)国庫金経理の仕組み上、実際の民間との資金受払と国庫収支の計上の時期に 2〜4 日のズレが生じる場合があり、このズレ分を調整する。(2)国庫預託義務を有していない一部の公庫(国民生活金融公庫、公営企業金融公庫)、日本政策投資銀行及び国際協力銀行の収支は国庫対民間収支には含まれないが、これらの機関の資金は実質的には国庫金と同様であると考えられることから、財政資金対民間収支に含めている。*12) https://www.mof.go.jp/policy/exchequer/summary/index.htm図表 11 国庫収支と財政資金対民間収支国 庫 内 振 替収 支現 金 収 支 =政 府 預 金 増 減国 庫 対 日 銀 収 支国 庫 対 民 間 収 支津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(中編)図表 12 政府預金や通貨量との関係
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