SPOT財政資金対民間収支の見込み本インタビューの目的津田夏樹 国際局地域協力課長服部孝洋 東京大学公共政策大学院特任准教授国際局地域協力課長 津田 夏樹/東京大学 服部 孝洋服部:財務省は財政資金対民間収支の内訳に関する統計を毎月リリースしています。財政資金対民間収支とは、国庫金の動きの中でも、対民間部分に焦点をあてたものといえますが、その定義は後程議論するとして、まずは、この統計がどのように見られているのかという観点で議論を進められればと思います。財政資金対民間収支は FB(政府短期証券)と深くかかわっており、短期金融市場の市場参加者は必ず見ている統計です。まず、最初にどのような形で統計がリリースされているかを確認します。図表 1 が 2025 年 6 月冒頭(6 月3 日)にリリースされた 6 月中見込み分です。津田:この統計は、月の初めの第二営業日に、前月の「実績」と当月の「見込」を出しています。このうち、当月の「見込」において、その月の T-Bill(FB は TB(割引短期国債)と合わせて T-Bill として発行されています)の公募発行の規模と、翌月の公募発行の目安を出しています。短期金融市場関係者は、特に T-Bill の公募発行の見込額などを見ていると言われています。服部:図表 1 をみると、大項目として、(1)一般会計、(2)特別会計等があり、(3)小計があります。その後、資金調達に相当する(4)国債等と(5)国庫短期証券(FB + TB)等という項目が来て、(6)小計と(7)合計があります。各種用語は財務省のウェブサイトに説明があります*2。注意が必要なのは、公表されている財政資金対民間収支の統計表には「見込」と「実績」の 2 種類があるという点です。図表 1 は「見込」の統計表であり、「実績」より「見込」の方が市場参加者により多く見日本の国庫制度について、その概要を明らかにした文献は必ずしも多いとはいえません。国庫制度についての知識は、国の資金の流れを正確に理解するだけでなく、金融政策等について正確に理解する上でも必須です。日銀が有する「政府の銀行」としての機能は、国庫金に係る制度そのものと言っても過言ではありません。そこで本稿では、国庫課課長の津田夏樹課長との対談を通じて、国庫制度およびその業務についての理解を深めます。本稿が短期金融市場の実務家にとっても役に立つ文章になることを期待しています*1。なお、本記事は、「津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(前編)」を前提としているため、そちらも参照していただければ幸いです(同記事については「前編」と記載します)。 10 ファイナンス 2025 Oct.*1) なお、本対談は 2025 年 6 月に実施されており、以下における肩書や組織名は2025 年 6 月当時である点に注意してください。また、本稿を記載するに*2) https://www.mof.go.jp/policy/exchequer/reference/receipts_payments/term.htmあたり、安斎由里菜さんと新田凜さんの協力を得ました。2002 年、東京大学法学部卒業後、財 務 省 に 入 省。 国 際 通 貨 基 金(IMF)金融資本市場局審議役、財務省理財局国庫課長兼デジタル通貨企画官を経て、2025 年 7 月より現職。2009 年コロンビア大学 MBA 修了。2008 年、一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了後、野村證券に入社。2016 年、財務省財務総合政策研究所を経て、2020 年に東京大学に移籍し、現在に至る。経済学博士(一橋大学)を取得。津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(中編)
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