ファイナンス 2025年10月号 No.719
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(1)夏祭り風の屋台(2)多様性を踏まえた食事対応上述の通り、APG 年次総会は多様性に富んだバックグラウンドを持つ数百名が参加する大規模な国際会議であり、準備業務は膨大かつ多岐に渡る。加えて、前回のアブダビでの年次総会は、「アラブの黄金宮殿」と呼ばれるエミレーツ・パレスで開催された上、運営や飲食といった点でも豪華さを感じる運営であった。かかる状況下、日本としては、予算と人員が限られる中で、いかに我が国の魅力をアピールする「おもてなし」ができるか、とチーム一丸となって知恵を絞った。今回は、特に好評であった内容を 3 点紹介致したい。APG 年次総会では、会期中にホスト国が「オフィシャルレセプション」として催し物を伴う夕食会を実施する慣例がある。日本は、「日本の夏」を体感し、楽しんでいただけるように、射的、輪投げ、飴細工、綿菓子の夏祭り風の屋台を会場に設置したところ、参加者に大変好評であった。特に、射的の屋台には開場前から長蛇の列ができ、乾杯の間際まで人だかりができるという大盛況であった。APG 事務局がオーストラリア連邦警察傘下にあるように、マネロン等対策の参加者には警察関係者も多いことから、射的用の銃を見て心が騒ぎ、磨き上げた自慢の腕をここぞとばかりに披露しようとしたのかもしれない。準備で非常に大変だったのは、参加者の食事制限(dietary preferences)に係る対応である。宗教、主義・思想、アレルギーに基づくものから、単なる「食の好み」まで、約 450 人の参加者それぞれに意向がある中での対応が必要であった。特に、ハラル対応については、各所から情報を集めつつ、手探りでの対応も多かった。最終的には、ホスト国としての対応方針(ハラル認証までは得ていないが、「ハラルフレンドリー」な料理は提供可能、等)の周知や、ムスリムの方向けの東京ガイドの展開といった事前対応を実施するとともに、開催期間中には、ハラル・ベジタリアン向けの料理か、どのような材料が含まれているかといった点をわかりやすく表示したビュッフェ形式で食事を提供した。東京総会では「ハラルフレンドリー」な料理が多く提供されたこともあり、ムスリムの方からは、日本の配慮に関する感謝が相次いだ。 6 ファイナンス 2025 Oct.飲食物に添えられた表示飲食物に添えられた表示夏祭り風屋台に興じる参加者夏祭り風屋台に興じる参加者4. 東京総会の準備

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