ファイナンス 2025年9月号 No.718
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ファイナンス 2025 Sep. 81進めてきました。まず 4 つあった観光関連団体と協議を進め、2023年 4 月にはこれら団体が全て一般社団法人小豆島観光協会に一本化されました。これを機に小豆島に存在しなかった観光長期計画として、2024 年 1 月に初めて「小豆島観光ビジョン」を策定しました。また、2024 年 3 月には小豆島観光協会が観光地域づくり法人(DMO)として正式登録され、小豆島の観光を推進する役割が明確になりました。2024 年の小豆島の観光客数は約 97.9 万人と、前年(2023 年)の 91.6 万人から約 7%の増加を記録しました。2019 年(115.3 万人)のコロナ禍前と比較すると同水準とまではいきませんが、概ね回復してきている状況にあります。一方で、宿泊者数は 2024 年が 28.7 万人で前年比5.5%増加したものの、2019 年の 45.9 万人と比べると約 6 割にとどまっています。これはパンデミック期に多くの宿泊施設が休業・廃業したこと、また営業中の施設でもスタッフ不足によりフル稼働が難しい状況が続いているためです。その中で外国人宿泊者数は4.2 万人と大きく回復し、宿泊者全体に占める割合も15%弱まで戻ってきました。また、お遍路や団体旅行は大幅に減少し、マイクロバスの利用は 2019 年比で 51%にとどまっています。これらの傾向から、観光の個人化が進みつつあることが読み取れます。香川県に属する小豆島は、土庄町、小豆島町の 2 町から成る離島で、面積 169.93km2、人口 24,230 人(2025 年 4 月 1 日時点)、豊かな自然と文化、食の資源に恵まれた地域です。オリーブや素麺、醤油、石材などが特産品として知られ、観光地としてはエンジェルロード、寒霞渓、小豆島オリーブ公園、迷路のまち、二十四の瞳映画村などが人気を集めています。しかし、島内人口の減少傾向が続く中、瀬戸内国際芸術祭の開催やインバウンドの増加もあり、オーバーツーリズムの兆候が見られるなど、持続可能な観光の在り方が問われるようになりました。また、新型コロナウイルスの影響を受けた際には観光客が激減、「観光の島」である小豆島は大きな打撃を受けました。こうした背景の中、観光により「消費される島」から「持続できる島」への転換が急務とされており、2022 年、土庄町と小豆島町は観光振興による島の活性化を施政方針の冒頭に掲げ、そのための環境整備を現状1. 小豆島の概要と観光協会統合の背景小豆島オリーブ公園(一社)小豆島観光協会 事務局長塩出 慎吾2. 観光客数と宿泊客数の推移と 小豆島におけるサステナブルな観光の推進小豆島各地の話題連載各地の話題

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