ファイナンス 2025 Sep. 79財政融資資金は、低利で長期の資金を地方公共団体に供給することで、インフラ建設や公共事業に広く活用されています。本稿では、地方公共団体が財政融資資金を活用して整備した「道の駅」が地域振興に役立っている事例として、茨城県常総市の取り組みをご紹介します。道の駅は 1993 年の制度創設以降、全国に設置され、観光情報の発信や地元産品の販売、地域住民と観光客の交流、防災拠点としての役割など、地域経済の振興に大きく貢献してきました。今回ご紹介する茨城県常総市は、農業を基幹産業とし、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)や国道が走る交通アクセスにも恵まれた地域です。市が設置し、2023 年 4 月にオープンした「道の駅常総」は、県内外から多くの観光客が訪れ、メディアでも取り上げられるなど高い注目を集めています。「道の駅常総」は、地域農産物の販路拡大・新たな市の玄関口・防災といった諸機能を担う、農業を活かした新たなまちづくりの拠点として整備されました。1 階には、地元で収穫された野菜や果物を販売する直売所、メロン・さつまいも・鶏卵など茨城県で生産が盛んな農産物を使った加工品やスイーツを扱う店舗がそろっています。2 階には茨城県産の食材を使用したメニューを提供するレストランがあり、広々とした空間でゆったり過ごすことができます。屋外スペースには多目的広場、遊具、展望デッキが設けられています。展望デッキからは、はるかかなたまで広がる関東平野の空を望むことができます。常総市では 2015 年に市内を流れる河川による水害が発生しました。その教訓を踏まえ、「道の駅常総」は防災拠点としての機能が強化されています。建設に当たっては敷地を約 2 メートルかさ上げし、浸水を防ぐ設計となっています。また、防災倉庫や太陽光発電設備などは 2 階に設置され、水害時でも機能を失わないよう工夫されています。また、「道の駅常総」周辺は「アグリサイエンスバレー事業」による開発が進められています。書店や温浴施設が隣接し、少し先には観光農園も営業しており、これらの民間集客施設と一体的に整備されている点が特徴です。1.はじめに2.「道の駅常総」の概要広々とした駐車場「道の駅常総」(写真提供:常総市)関東財務局水戸財務事務所財務課地域経済の発展に 貢献する財政融資資金常総市各地の話題連載各地の話題
元のページ ../index.html#83