年連載PRI Open Campus 72 ファイナンス 2025 Sep.り、日本は世界に対して非常に開かれた姿勢を持ちながらも自国のアイデンティティを守ることを強く意識していたということです。この「強いアイデンティティ」と「他国のアイデアや解決策に対して開かれた姿勢」の両立こそが、日本が TFF のような国際フォーラムの開催地として非常にふさわしい理由だと私は考えています。毎年日本を訪れて、日本から、そして他国の参加者から学んできたことは、私にとって非常に有意義な経験となっています。今回のTFF の閉会挨拶でもおっしゃっていたことですね。改めてお聞きですることができ、嬉しく思います。3. 国際社会の変化と財政政策の役割、今後政策当局者が考えるべき課題Tokyo Fiscal Forum 各年のテーマの財政当局者等が参加。※ 2021 年は関連イベントとして政策担当者や有識者を集めたオンラインセミナー(テーマ:アジアにおけるポストコロナの財政政策とデジタル化に向けて)を開催。16ヵ国2015 年 高齢化社会における長期的な成長と持続可能性に向けた財政政策高齢化社会における長期的な成長と財政の持続可能性に向けた財政政策:持続可能な社会保障支出の達成2016 年2017 年人口構造の変化と将来的な不確実性の下での財政政策:アジアにおける包摂的成長のための持続的な政策形成2018 年 アジアにおける財政運営手法の強化2019 年 G20 の成果:アジアにとっての意義2020 年 アジアにおける力強い経済回復と健全な財政の実現に向けて2022 年 ポストコロナの財政政策:アジアにおける強靭で包摂的かつデジタルな未来へ向けて2023 年 アジア太平洋地域における経済財政上の強靭性の構築と財政政策の再形成2024 年 透明で効率的な歳入確保と支出による財政の強化2025 年 財政の持続可能性と財政運営の強化テーマ14 か国 対面開催15 か国 対面開催19 か国 対面開催参加国数備考15ヵ国 対面開催12ヵ国 対面開催19ヵ国 対面開催20ヵ国 オンライン開催21ヵ国 対面開催18ヵ国 ハイブリッド開催20ヵ国 ハイブリッド開催日本は二つの大きな課題に直面しています。人口減少と、GDP 比約 240%にもなる公的債務残高です。これらの課題は、Gaspar 局長がよく言及なさる財政政策のトリレンマとも関連しています。IMF の視点から、日本が直面する財政上の課題について、どのような点に留意すべきとお考えでしょうか。また、日本政府へのアドバイスがあればお聞かせくださいまず申し上げたいのは、日本は「財政の余地(バッファー)」が限られているという現状です。これは、まさにご指摘の通り、高水準の公的債務に加え、金利上昇や高齢化に伴う医療費や年金支出の増加など、支出面での圧力が背景にあります。このような状況は、日本が将来の経済ショックに対応できるようにするためにも、債務の持続可能性と金融の安定性を両立させる、長期的な戦略を策定する必要性を物語っています。特に昨今、世界経済の不確実性が高まる中にあっては、その重要性がいっそう増しています。また、こうした状況は、先ほど言及した財政政策のトリレンマにも通じます。日本において、このトリレンマを緩和することは容易ではありませんが、決して不可能ではないと私は考えています。その鍵となるのは、「成長見通しの改善」です。日本は長期的な潜在成長率の向上に強い優先順位を置くべきだと考えま
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