SPOT 46 ファイナンス 2025 Sep.*21) 「報告書」69 頁。日本も財務省・金融庁による合同金融・外為検査や、防衛省による各省間との即時情報共有等をグッドプラクティスとして提供している。日本においても、関係者の理解の一助とすべく、現在最終報告書の日本語への翻訳作業を行っている。完成次第、その翻訳版を元に積極的にアウトリーチを行っていく予定である。第 5 次対日相互審査の本番といえるオンサイト審査は 2028 年 7 月頃。実際に残されている時間は想像以上に短いが、辿るべき道のりは未だ長い。2025年4月8日、東京 8時15分(パリ 1時15分、ワシントンDC 4月7日19時15分)「2月のFATF全体会合で、X国の首席代表が『FATFのマンデートである、勧告7が対象としている国連安保理決議に基づく制裁及びその回避行為と、そのマンデート外である、各国による独自制裁とその回避行為を、明示的に書き分けるべきだ。』と指摘したよね。いずれのカテゴリーも、このプロジェクトの射程に含めて良いと明確に承認されている。とはいえ、X国の提案のように明示的に書き分ける方法については、我々の間でも2月の全体会合前に既に議論していたし、各国から最終報告書への合意を取り付けるためには、その提案に沿って修正した方がいいかもしれないね。」と私。「そうだね。X国の首席代表は、報告書の冒頭に置くExecutive Summaryからその点を明記すべき旨要請していたから、早速修正案を作ってみたよ。また、ケーススタディもcolour coding(色分け)してみた。この後すぐにMasaに送るから、東京の業務時間中に目を通しコメントを付して、(ワシントンDCの)明朝までに僕に返送してくれるかな。そうすれば、パリ時間の夕方までに、僕が事務局と一当たりしておくよ。それを基に、明日事務局も交えた3者でビデオチャットして方向性を最終確認し、チームメンバーに修正ドラフトを送付しよう。」と相棒。米国のCo-leadは、2020年から3年間、私がFATF事務局で中東・アフリカ諸国のマネロン・テロ資金・拡散金融対策の改善を支援する会合の責任者であった際、米国代表メンバーとして共に活動していた。私が(現金の大量輸送を含む)を容易にしていることも課わ し い 取 引 を 少 し で も 検 知 で き る よ う、 巻 末 にAnnex として疑わしい取引の端緒をリスト化し「Risk Indicators」として掲載している。困難となりうる。イ.公的セクターのグッドプラクティスと課題「報告書」では、多くの国が拡散金融及び制裁回避スキームの特定における当局間連携の重要性を強調している。具体的には、法執行機関による捜査及び他の権限ある当局との情報交換は、事案紹介、共同捜査、意識向上に繋がり、制裁指定された個人・団体の資金や資産の流れの解明に資すると指摘している*21。そして、拡散金融及び制裁回避スキームに係る傾向、類型、指標を含むガイダンス資料の公表が、疑わしい取引の検知に不可欠であるとも指摘している。また、拡散金融と制裁回避スキームがクロスボーダーで行われる性質を踏まえ、情報収集と情報共有を通じた国際協力も検知と防止における重要な手段である。当時に、各国は、制裁プログラムの管轄権や関連する制裁対象団体リストの相違、各国の法的要件、様々な執行規則など、事案の把握・解明における課題も認識している。また、前述のとおり、北朝鮮が外交官を利用して、金融サービスの提供や制裁対象資産の移転題としている。多くの国は、実質的支配者情報の収集や入手可能性の一貫性の欠如を懸念しており、これが拡散金融及び制裁回避スキームの実態把握を更に複雑なものとしていると認識している。マネロン・テロ資金対策同様、拡散金融対策においても、当局が自国のリスクを適切に把握し、その情報を適時に民間セクターに提供し、それぞれの事業者が自己の取引に鑑み改めてそのリスクを認識し必要に応じて低減策を講じていく必要がある。大量破壊兵器の拡散に繋がりうる取引の最前線に位置する民間セクターの事業者とは引き続き緊密な連携が必要である。この観点から、「報告書」では、官民両セクターの関係者が、拡散金融及び制裁回避スキームに関連する疑5.エピローグ4.官民連携の重要性
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