ファイナンス 2025年9月号 No.718
30/90

SPOT 26 ファイナンス 2025 Sep.*1) 令和 7 年 6 月 13 日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針 2025」*2) 令和 7 年 8 月 8 日閣議了解*3) 概要資料(p27)についても、要求の上限を定めて抑えつけるかのような印象を与えないよう、体裁を従来のものから大きく変更している。また、閣議了解文も概要資料に合わせ、端的なものとしている。成長と分配の好循環が動き始めている中、令和 8 年度予算においては、成長型経済への移行を確実なものとするため、「骨太方針 2025」*1 等に盛り込まれた施策を速やかに実行していくこととしている。物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着、地方創生挙げて取り組むべき重要な政策課題に必要な予算を重点的に振り向けることによって、日本経済全国津々浦々の成長力を強化することが求められている。「経済あっての財政」との経済財政運営の基本姿勢のもと、経済再生と財政健全化をともに進めていくため、こうした重要かつ困難な課題に対応しつつ、これまでの歳出改革努力を継続することにより、メリハリの効いた編成を行っていくこととしており、その際、予算編成過程において、物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しも踏まえ、経済・物価動向等を適切に反映することが重要である。令和 8 年度予算の概算要求基準*2 は、こうした方針を明確化するとともに、内容面でも従来の取扱いについて一部見直しを行い、日本経済が新たなステージに移行しつつあることに対応するものとしている*3。令和 8 年度予算の概算要求基準では、まず、予算の中身を大胆に重点化するとともに、要求・要望は賃金や調達価格の上昇を踏まえて行い、予算編成過程において、経済・物価動向等を適切に反映することを明確化している。その上で、「年金・医療等」に係る経費について、前年度予算額にいわゆる自然増「0.40 兆円」を加えた額の範囲内で要求した上で、予算編成過程において、高齢化による増加分に相当する伸びに、経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算することとしている。また、「防衛力整備計画対象経費」については、「防衛力整備計画」を踏まえ、所要の額を要求することとしている。次に、「裁量的経費」については、従来は対前年度10%の削減要求を前提とした上で、削減額の 3 倍の範囲内で要望できるようにしていたが、今回、経済・物価動向等を踏まえて、削減要求は求めず、物価高対策を含む重要政策推進のため、前年度の「裁量的経費」の 20%まで要望できるようにしている。さらに、「義務的経費」については、従来は前年度と同額の範囲内での要求を原則としていたが、今回、人件費については、人事院勧告を受けて予算編成過程で対応することを明確化するとともに、その他の「義務的経費」については、経済・物価動向等を踏まえ、各経費ごとの義務的性格に基づき所要額を要求する取扱いへと見直している。また、「地方交付税交付金等」については、「経済・財政新生計画」との整合性に留意しつつ要求することとしている。いわゆる高校無償化、給食無償化及び 0~2 歳を含む幼児教育・保育の支援については、「骨太の方針2025」の記載の通り、これまで積み重ねてきた各般の議論に基づき具体化を行い、予算編成過程において、検討することとしている。物価高対策を含む重要政策等については、必要に応2.0 の推進、官民連携による投資の拡大など、政権を主計局総務課主計官 松本 圭介企画係長 新井 颯太企画係 加藤 聡太1.はじめに2.令和 8 年度概算要求基準の概要令和 8 年度概算要求基準の概要

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る