ファイナンス 2025年9月号 No.718
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SPOT ファイナンス 2025 Sep. 21津田:先ほどもあったように、国庫課と比べ、確かに日銀の業務局の方が圧倒的に人数は多いです。国庫業務を担う業務局では 100 名程度の人員が従事していますし、デジタル通貨は、日銀では決済機構局が担当しています。その意味で、国庫課では、日銀と協力しながら業務をやっているともいえます。貨幣と紙幣に関しても、日銀のカウンターパートとして発券局があり、そこはまさに紙幣の発行や流通を担っています。このように日銀に政府の事務を委託して実務を行っているわけですが、一方で、制度の企画・運営は政府である国庫課などで有しているということです。服 部: 世 間 的 に は 日 銀 が 中 央 銀 行 デ ジ タ ル 通 貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)を推進しているというイメージがあるかもしれませんね。財務省国庫課では、デジタル通貨は課長を合わせて 8 名でやっているのですね。津田:実際に人数も日銀のほうが多いですからね。また、CBDC は Central Bank Digital Currency の略なので、最終的に発行者が中央銀行になるという特徴もあります。でも、紙幣のデザインは財務大臣が決めているといったような観点で考えると、CBDC も骨格的な位置づけは財務省が決めることになります。服部:日銀とのやり取りは、具体的にはどういうイメージでしょうか。津田:係によってやり取りの形は違うとは思います。例えば、デジタル通貨の場合には、企画係が対外的な調整を行うので、企画係以外の係で直接日銀と接触することはあまりないという印象です。服部:次に、国庫業務における、国庫調整係および国庫収支係について教えてもらえないでしょうか。津田:これらの係は国庫業務の実務の担当です。7 名の体制で回せる理由として、日銀のサポートがあるからですが、日銀業務局の財政収支グループが、この業務のカウンターパートです。そこは合計 10 人ぐらいのユニットです。この業務を実施する上では、「国庫収支事務オンラインシステム」というシステムを用います。各省庁が今後、いつどれだけのお金が必要、といったことを登録することになっています。そのデータに各省が入力した結果を、我々国庫課とともに日銀もチェックする体制になっています。例えば、◯◯省が来月にある事業でこれだけ使いますと入力します。お金が必要なら 3 週間前から入力する必要があり、変更があれば、アップデートを求める形を取っています。服部:そのお金の動きについて、文部科学省を例に取って考えようと思います。例えば、研究者は、科研費を文科省の公募を通じて獲得していますが、そもそも、まず文科省が財務省との折衝等を経て、科研費の枠を取ってきて、その枠の範囲で、研究者である僕らが申請して、申請が通れば、その科研費が研究者が所属する大学の口座などに振り込まれるはずです。その場合、その入金される 3 週間前に文科省がそのシステムに入力するというイメージでしょうか。津田:そうですね。厳密には、大学は日銀に預金口座を持っていないので、例えば民間 A 銀行に口座を持っていて、そこに日銀から銀行間送金を通じて大学の口座に入金されることになります。そもそも、各省庁が主計局に対して予算を要求して、主計局が本当に必要かという議論をした結果、最終的にこのぐらいの金額にしましょうと合意したものが、予算ということで予算書に書かれるわけです。例えば、文部科学省は〇〇億円、厚生労働省は〇〇億円というような形です。この予算書が 1 月からの通常国会に提出されて、衆議院と参議院で可決した結果、予算として成立することになります。予算が通れば各省庁はそのお金をいつでも使えます。ただ実際に使うためには、各省庁は支払の計画を作成し、それに基づいて諸々の手続きが進み、最終的に国庫収支事務オンラインシステムに連絡があって、その予定日にお金が出ることになります。服部:国庫課はそのシステムの中身を見て、このぐらい支出が必要だが、では現在それに伴う収入があるのか、ということを考えるわけですね。もし将来収入があるにもかかわらず、収入のタイミングのずれがあり用 意 で き な い とい う 場 合 であ れば、 政 府短 期証 券(FB)を出すわけですね。単に出入りのタイミングのずれであれば、最終的にはどこかで収入があるはずで津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(前編)国庫課と日銀の連携国庫の実務を担う国庫調整係と国庫収支係

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