ファイナンス 2025年9月号 No.718
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SPOT あたり、安斎由里菜さんと新田凜さんの協力を得ました。いう』と定義される。」と定義されています。また大内(2005)では、「国庫」の定義の後に「国庫金」を説明しています。*1) なお、本対談は 2025 年 6 月に実施されており、以下における肩書や組織名は2025 年 6 月当時である点に注意してください。また、本稿を記載するに*2) 大内(2005)では、「国庫とは、通常、『国について、立法・司法等の機能の主体である国から区別して、財産権の主体としてみた場合に、特に国庫と2002 年、東京大学法学部卒業後、財 務 省 に 入 省。 国 際 通 貨 基 金(IMF)金融資本市場局審議役、財務省理財局国庫課長兼デジタル通貨企画官を経て、2025 年 7 月より現職。2009 年コロンビア大学 MBA 修了。2008 年、一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了後、野村證券に入社。2016 年、財務省財務総合政策研究所を経て、2020 年に東京大学に移籍し、現在に至る。経済学博士(一橋大学)を取得。ファイナンス 2025 Sep. 15国際機構課で G7 や IMF の担当をしました。その後、1 年間、熊本国税局で働いた後、主税局で 2 年間、税制 改 革 の 取 り ま と め の 仕 事 を し ま し た。 そ の 後、ニューヨークのコロンビア・ビジネス・スクールに留学し、帰国後の 2 年間は金融庁で銀行監督をしました。財務省に戻ってきてからは、為替市場課で外貨準備の運用に従事しました。その後、主計局で国土交通係の主査と調査課の課長補佐をしたあと、ワシントンDC にある世銀理事室へ出向しました。帰国後は国際機構課でG20議長国のとりまとめ担当やコロナショックへの対応をし、それから国際局の総務課にうつり、国際局の全体の人事や戦略に関することを担当していました。それが終わってから、2021 年から 3 年間、IMF に出向して中央銀行デジタル通貨(CBDC)の調査や途上国支援を担当しました。去年(2024 年)の夏に財務省に戻ってきて、国庫課長とし国庫管理と現金の発行等と、デジタル通貨企画官として CBDC を検討する仕事をしています。服部:まず、かなり大きな話になってしまいますが、そもそも国庫とは何かという点についてご説明いただけますでしょうか。津田:国庫とは、国が保有する様々な資産のことです*2。現預金や不動産など、国家に帰属する財産的価値のあるもの全てを総称して国庫といいます。ここで指している国とは、いわゆる教科書に書いてあるような、行政・立法・司法といった三権分立のような機能的な分割というより、むしろ立法府や司法が持っているような財産も含めて、横串でまとめて管理している主体を指しています。国庫の中には、国会の日本の国庫制度については、その概要を明らかにした文献は必ずしも多いとはいえません。国庫制度は、国の資金の流れを正確に把握するだけでなく、短期金融市場の実務や金融政策等を的確に理解する上でも不可欠です。日銀が有する「政府の銀行」としての機能は国庫金に係る制度そのものと言っても過言ではありません。そこで本稿では、国庫課課長の津田課長との対談を通じて、国庫制度およびその業務についての理解を深めます*1。服部:まずは簡単に、入省後からこれまでの経歴を教えていただけますでしょうか。津田:2002 年に財務省に入省して、最初は国際局の国際局地域協力課長 津田 夏樹/東京大学 服部 孝洋本インタビューの目的国庫とは何か津田夏樹 国際局地域協力課長服部孝洋 東京大学公共政策大学院特任准教授津田夏樹課長に聞く、日本の国庫制度(前編)

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