ファイナンス 2025年9月号 No.718
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ファイナンス 2025 Sep. 13将来世代!?負担選挙権ないのに…大滝室長 本来、「導管」は同じ世代の中で、所得が多い個人の負担が大きく、所得の少ない人に再配分するという機能がありますが、国債を発行することでこの所得の再分配機能は弱くなります。曲淵補佐 私は中長期的な目線で財政の持続可能性のために調査や分析を行っています。その立場からは、将来世代はいつか国債償還の負担を求められる可能性があるにもかかわらず、国債を発行して財政支出を行う現在の時点では声を上げられないという側面があるように感じます。河本主計官 財務省は世の中に嫌われる仕事ばかりしている印象ですが、働いている個々人はごくシンプルに言ってしまえば、将来世代のためだけに嫌われながら頑張っているという感じです。結城東輝さん 今のご説明、とても分かりやすいですね。話は戻るのですが、NHK の番組では国債発行チームがドバイまで行って国債の売り込みをしている映像がありましたが、そんなことまでしているのかと驚きがありました。大滝室長 国債を巡る状況が大きく変わってきている中、国内に対しても、例えば地銀を訪問するなど、幅広い投資家との意見交換を進めています。先日、ある大学から学生に対して番組を見ながら解説してほしいという依頼がありました。学生の中には財務省に無関心な人もいたようですが、後日、大学から受講生の感想を送付頂いたところ、「このような(国債発行業務の)世界があるとは知らなかった」、「やっぱり、直接の担当者から話を聞くのでは全然感じ方が違いますね」というコメントがありました。結城東輝さん 今日の対談も目の前の生身の職員が話すから本当に伝わるものがあるなと思います。私を含め、記事などのセカンダリーの情報を通してしか財務省を知らない国民がほとんどだと思いますが、それだけだと「財務省」という大きな括りで誤解され続けてしまう気がします。曲淵補佐 情報発信の仕方という点では、私自身もSNS やショート動画を見ることが多いので、財政にあまり関心がない方も含めて幅広い層にアプローチす配っているものです。つまり、財政って「導管」なんです(図 2)。本来は個々人が稼いだものをそれぞれ遣えばいいのですが、一度政府に預けて、資源の再分配をしているんですね。ところがこの「導管」には落とし穴があり、税収以上の分配が出来てしまいます。国には信頼があり借金ができますので。バブル崩壊以来、税収の 1.5~1.7倍程度の分配をしていて、足りない分を国債発行で埋めています。図 2 財政のイメージ?つまり、国は、税制と予算を通じて導管のような役割を果たし、公共サービスの提供を含む「資源の再配分」をやっているに過ぎないのです。実際には、徴収した税金は全て、いや、それ以上に、その年のうちに経済に還元しています。税金「将来世代からも借りられる」100再分配再分配情報発信についてただ、公債の発行によってという構造になっています。再分配予算60160税金予算国債Ministry of FinanceMinistry of FinanceMinistry of FinanceFFutuuturree TTALKALK  〇〇さんと日本の未来とイマを考える〇〇さんと日本の未来とイマを考える

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