12 ファイナンス 2025 Sep.よね。内訳は 28.2%が租税、18%が社会保障負担とのことでした。このような可視化が重要だと思っていて、イギリスでは“Where Does My Money Go ?”というサイトがあり、納税の際に、あなたの税金や社会保険料はいくらで、それは何にいくら使われていますよ、ということが表示されます。日本も、もっと可視化したほうがいいと思います。例えば確定申告の際に受益と負担の個別費目と金額を可視化するような仕組みを導入できないでしょうか。河本主計官 日本では確かに税負担と使途が見えない構造になっていますね。主税局時代に、部下に自分の所得税の税率区分を知っているかと訊いたら知りませんでした。課長は?と訊かれて自分も知らないことに気が付きました(笑)。結城東輝さん 年収、単身か世帯か、扶養の人数等、ある程度の細かい条件を打ち込むと、自分はいくらの税金や社会保険料を負担していて、会社もいくら負担していて、その結果どの歳出費目にどの程度使われているか、場合によっては国債の返済にいくら使われましたよということが、より解像度高く示せるようになれば理想ですよね。そうすれば、治安や道路、教育などの公共サービスは、規模の経済が働いていかにコスパ良く、逆に言うと負担に対する受益がいかに大きいかが身近に感じられますし。河本主計官 その通りだと思います。数年前、主税局にいた時にこんなものを試作してみました(図 1)。これは、一般的な家庭が税金でどんな公共サービスを買っているかを可視化したものです。夫婦 50 歳共働き、4 人家族のモデル家庭では国・地方に月々8.7万円支払っていますが、これを国・地方の支出で按分すると、例えば警察には 1,894 円支払っていることになります。例えば、民間警備会社には月々6,000 円~サービスが月々2,000 円以下です。結城東輝さん 警察という公共サービスが月々2,000円のサブスクだと思うと、かなり安いですね。また、受益と負担のトレードオフ関係を説明するときにも、イメージしやすいです。このような可視化を通じて、選挙などの際に自分事として論理的に判断しようとする人が増えてくれるといいなと思います。結城東輝さん ところで、先日、国債発行の現場に密着した NHK の番組を拝見しました。財務省の国債発行チームの皆さんが頑張っている姿は、とても印象的でした。個人的にはあの番組は一種の職場見学だと思っていて、新鮮に感じた人が多かったのではないでしょうか。財務省職員個人での発信というのは批判リスクもあるかもしれませんが、もっと職員の姿を映した発信が増えていくといいのかなと思います。大滝室長 私は以前の部署で、その番組の取材に応じていた本人です(笑)。十数年前にも同じ部署で同様の取材を受けましたが、その時は入札を扱う部屋には取材は入りませんでした。当時は、財務省の仕事というのは治安維持と一緒で、公にするまでもなく見えないところでうまくやっているのがいいことだと思っていましたが、民主主義の在り方も変わってきていることもあり、今の時代は包み隠さず発信していくことが重要と感じています。結城東輝さん なるほど…。今お話を聞いているだけでも、財務省の役割や職員の仕事ぶりというものが一般的なイメージと違うと感じます。もっと財務省の役割を知りたいですね。河本主計官 ありがとうございます。せっかくですので、予算や税制における財務省の役割を説明させてください。財政は、国民の皆様から納めていただいた税金をもとに、予算という形でその年のうちに全額、世の中に7,000 円のサービスがありますが、都内だと平均 7~8 分で銃を持った警官が 2 人現場に駆けつけてくれる写真 3 理財局総務課政策室 室長 大滝 祥生国債の発行について
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