6543210連載PRI Open Campus (年)(兆ドル)日本米国英国フランスドイツスイス(5)対外取引と資金需要図 11 対内直接投資残高推移図 12 国籍別銀行の国際与信図 13 日本の貿易建値通貨比率:輸出(対世界)(1980〜2024 年)図12(出所)財務総合政策研究所(2025)『「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」報告書』(出所)財務総合政策研究所(2025)『「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」報告書』(出所)財務総合政策研究所(2025)『「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」報告書』ファイナンス 2025 Aug. 45国籍別銀行の国際与信市場の対外的評価の低下が見られます。図 11 の対内直接投資残高推移を見ても、他のアジアの主要な金融都市(香港・シンガポール)と比較して、日本の対内直接投資残高は低迷していることがわかります。金融市場のうち、特に公社債市場については、量的・質的金融緩和以降、社債発行残高割合が一時 5%台まで低迷し、公社債市場において社債発行残高割合が約 8 割を占める米国や、約 6 割を占める欧州と比較して非常に小さいことが知られています。その背景として、社債より低い利回りで銀行借入が可能である点に加え、社債利回りが低い場合でも株式による資金調達を好む日本の経営者の意識などが指摘されました。続いて、対外取引と国内資金需要の関係に着目し、金融・貿易の 2 つの側面から現状を整理しました。まず、金融面から、国籍別銀行の国際与信を見ると、邦銀の国際与信規模は世界一であり(図 12)、これは、世界金融危機後に欧州の金融機関の国際業務が縮小する一方、邦銀が積極的に海外進出したことが背景にあります。その与信の通貨別の内訳を見ると、円の預金量を背景としたドル貸付、現地企業向け融資が多いことがわかっています。こうした国外の企業活動における資金需要の実態を把握するため、海外で事業展開するメガバンクへのヒアリングを実施しました。ヒアリングの結果、日本企業は内部留保があるため本社・海外子会社の自己資金の活用が可能であったことや、現地国内取引において、現地通貨での取引を義務付ける現地当局の規制などにより、円の資金需要が増えないことが明らかになりました。一方、日本経済が発展し、現地銀行と直接取引できる国際的信用力を持つ日本企業が増えたことや、世界貿易に占める日本からの輸出の重要性が低下することによって、円建て貸付の機会が減少し、円の資金需要が増えないことはやむを得ないという点も指摘されました。次に貿易面の資金需要について、貿易取引でどの通貨を選択するかを示す建値通貨比率を見ると、日本は対世界において、輸出では 50%以上(図 13)、輸入では 70% 弱(図 14)がドル建てでの取引となっており、輸入の方がドル依存の傾向が強く、したがって、外貨建てで評価した際には、構造的に赤字傾向に陥りやすいと言えます。ただし、業種別で見ると、高い輸出競争力を持つ産業は円建てで輸出を行っており、特に一般機械産業でその傾向が顕著であることが指摘されました。PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 46
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