ファイナンス 2025年8月号 No.717
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比PDG対201620192022200720102013199519982001200420192022201020132016200120042007199519982022201320162019200420072010199519982001201920222010201320162001200420071995199820222013201620192004200720101995199820012019202220102013201620012004200719951998201620192022200720102013199519982001200420222013201620192001200420072010199519982022201320162019200420072010199519982001201620192022200720102013199820012004199520222013201620192004200720101995199820012019202220102013201620012004200719951998505005050503210連載PRI Open Campus 民間非金融法人企業 株式(負債)海外 FDI(負債)15601050403020101515101015101510資産負債資産資産負債資産資産負債資産負債負債負債3.52.51.50.5民間非金融法人企業 正味資産(SNAベース) 民間非金融法人企業 保険・年金等を除く負債海外 対外証券投資(負債)4. 「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」の成果図7米国スイス中国韓国(出所)財務総合政策研究所(2025)『「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」報告書』日本ドイツ(出所)財務総合政策研究所(2024)『「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」報告書』(4)資金循環から読み取れること(1)資金余剰主体としての日本企業図 7 対外資産・負債の国際比較(兆ドル)図8図 8 対外投資と国内民間企業の負債・正味資産ファイナンス 2025 Aug. 43経常収支について見ても、日本の所得収支黒字幅は諸外国に比べて大きいものの、これも対内直接投資残高の小ささが寄与していると考えられます。また、日本では輸出入の所得弾力性の違いから、近年、貿易収支が悪化しやすい傾向にあり、今後、貿易赤字は恒常的になる可能性があることが指摘されています。これまでの議論を踏まえ、望ましい資金循環については、必ずしも生産性向上に結びつくとは限らない政府の財政赤字を起点とするキャッシュフローではなく、銀行からの借り入れを伴う企業活動から生まれたキャッシュフローが家計の給与となり、家計がその給与を使って消費を拡大するという好循環が生まれていく中で、企業部門が資金不足の状態になっていることが重要であるとの指摘がありました。また、現在の日本全体の経済活動の規模を拡大するには、消費拡大が望ましく、その結果として貯蓄や家計資金余剰が減ることが経済活性化と整合的な姿になります。また、家計の資金余剰の蓄積が減る場合、資金循環上、政府の資金不足が減る必要があり、これは、高齢化が進んでも社会保障費が膨らまない状況を意味し、家計に対する給付と負担のバランスを変化させる必要があります。そうした中でも家計の消費が抑制されないためには、所得形成が盤石である必要があり、その起点となる労働市場の改革や、企業による積極的な国内投資が家計の所得環境の向上にもつながることが示されました。また、海外収益によって向上した企業価値を国内投資に繋げることを 1 つの契機として、日本経済を望ましい資金循環の姿に近づけることができると考えられます。家計・企業の資金余剰が政府に貸し出される現在の資金循環構造は、制度部門ごとの課題を反映しており、容易に変えることができない状況ですが、長期的には維持が困難となる可能性が高く、将来の資金循環構造の非連続な変化を回避するためには、制度部門ごとの課題解決が不可欠であると言うことができます。2024 年 11 月から 2025 年 4 月に行われた「日本企業の成長と内外の資金フローに関する研究会」では、資金余剰主体である企業部門と資金不足主体である海外部門との関係に焦点を当て、世界経済の成長を日本企業全体の安定的な成長に結びつける上で望ましい企業活動や、内外の資金循環のあり方について考察を深めました。その際、豊富な国内貯蓄をどのように活かすか、自国通貨である「円」のプレゼンスをどう向上させるか、といった観点からも議論が行われました。まず、資金余剰の状態にある企業が、長期的にどのような資金の使い方をしてきたのかについてマクロ的な観点から整理します。図 8 は、対外投資と国内民間企業の負債・正味資産を示した図ですが、2000 年代以降、対外証券投資と対外直接投資は増加している一方、国内民間企業の負債は増加しておらず、正味資産が伸びていることがわかります。これは、日本企業によって対外投資が活発PRI Open Campus ~財務総研の研究・交流活動紹介~ 46

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