ファイナンス 2025年8月号 No.717
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連載セミナー財務省の情報発信の現状アルゴリズムとアンチコメント1.アンチ的な反応を抑制する 38 ファイナンス 2025 Aug.5 回繰り返して書いて投稿(本当のことなので 5 回言SNS でそのまま投稿するような例がありますが、SNSの チ ャ ン ネ ル 登 録 者 数 が 10 万 人 を 超 え た た め、YouTube から銀の盾が届きました。そこで、オリン源タップにも寿命があるという普遍的な話と、「電源タップにも寿命があります。」という言葉を SNS 上でいますと表記)という単純なテクニックを使ったものなのですが、これで拡散しました。同じ話題でもネット的な表現とマスメディア的な表現とでは違いがあり、表現をそれっぽくするだけでもバズる可能性が出てきます。情報の見せ方としては「主語」「事象」「絵力」「感情」の四つの掛け合わせがネットでうけやすいポイントです。このうち「絵力」と「感情」は特に重要な表現方法です。同じ情報を別々の表現で伝えている例を挙げます。犯人逮捕に貢献した警察犬が表彰されてビーフジャーキーを一年分貰ったという事例です。一般的なニュースではその事実をそのまま伝える表現となっていますが、そんなに見られておりません。livedoor ニュースの表現ではビーフジャーキーをもらうことを「ご褒美」と表現しており、写真も犬が首にジャーキーを下げていて、舌を出してちょっと嬉しそうなニュアンスを出しております。記事には「可愛いね!」みたいなコメントがついて、こちらはよく見られています。企業の例では、文字情報で展示会の出展の告知をを使うのであれば具体的に展示するものの技術を動画で投稿するなど絵力を出す方が効果的です。サスペンションの会社がサスペンションの上にワイングラスの乗ったオモリを落としてサスペンションのクッション性を示すという展示をしていました。実際に SNS ではその動画が大きく拡散しています。私が livedoor でやっている動画「ゲームさんぽ」パスの顕微鏡を使って、銀の盾がどのように作られているのかを分析する動画を作りました。顕微鏡というのは普通は扱いづらい商材なのですが、「YouTuberの銀の盾」という絵力のあるものを組み合わせて動画にすることで、再生回数が伸びました。ネットではマニアックさと時間的耐久性のある情報を扱い、ビジュアルや感情を呼び起こすような表現を意識し、画像や動画で凄さをぱっと示すことが重要なのです。ここまでの話に照らして、ネット上の財務省の情報発信がどんな構造になっているかを考えてみます。財務省の発信には、カスタマージャーニーの一番外側にあたる万人向けの部分と一番コアな部分はあると思います。例えば、外側の部分に関しては、財務省ホームページの「財政を考える」の箇所で、教科書的な初心者に対する財政均衡の説明のコンテンツがあると思いますし、個人向け国債の推奨といった一般層とも親和性が高そうな情報も置いてあります。コアな部分に関しては、財務省の広報誌「ファイナンス」や、公式アカウントで活動を情報発信されています。課題は「カスタマージャーニーの外側の部分とコアな部分をつなぐものがない」ことです。もっと踏み込んで、財政均衡についての深い情報を語るコンテンツを動画で作成するなども考えられると思います。「ファイナンス」は、世の中の経済全般やトレンドの市場などが分析されていて、コア向けコンテンツとして非常に良いと思うので、これを動画など絵力や感情を喚起するような形で出していくのもよいと思います。コア情報を提供するのは「財務省は経済のことを深く考えていますよ」というアピールにもなります。SNS のアルゴリズムは、アンチを抱えやすい構造にもなっています。SNS では、アクションをすると、そのクラスターに好評な情報だと思われて、共通の趣味を持つクラスターに広がっていくことをお話いたしましたが、アンチも同じくコメントなどの能動的なアクションをするので、SNS のアルゴリズムは「なんか人気ありそうだ」ということで、アンチのクラスターにどんどん情報を広げていく、という流れになっています。ですから、ブロックまではいかなくとも、アンチコメントを報告するとか非表示にすることで、アルゴリズムにアンチクラスターは別のクラスターであると伝えることはできます。

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