ファイナンス 2025年8月号 No.717
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連載セミナー 2.コアな話題の届け方令和 7 年度職員トップセミナーファイナンス 2025 Aug. 37さは関係なくなってきています。情報がいつ時点のものであっても、検索して初めてその情報に触れた人にとっては、新しいものだからです。炎上も含め、何十年も前の情報が最新の情報かのように SNS で出回るのを見たことがある方も多いと思います。つまり、SNS にとっては「いつ見ても意味のある情報であること」が重要です。例えばヤフーニュースのトップでは「ギンナン中毒が危険」とか、「電源タップにも寿命があります」といったものも取り上げられています。ネットでは新聞などその日に意味のある情報を提供する必要があるアナログ媒体より、「誰がいつ見ても役に立つ情報」が扱われやすくなっています。情報の中身としては「時不変なものが重要である」という前提を持ちつつ、表現方法には重要な点が二つあると思います。一つ目は「“人”を見せる」、二つ目は「情報の見せ方」です。(1)“人”を見せる“人”を見せると、友達が言っているみたいな感覚になるので、親近感が湧いて、深い話も届きやすくなる、ということです。この観点で、他者を使うのがいわゆるインフルエンサーマーケティングであり、自分でやるのが SNS 運用になります。文部科学省が出している「ネットで知り合った人と安易に会うのはやめましょう」という内容の啓発動画があります。かなり初心者向けの一般的な啓発動画なので、ネット上ではあまり見られていませんでした。そんな中、小中学生に人気のゲーム実況をしているユーチューバーが、「一緒にその啓発動画を見よう」という動画を作ったところ、130 万回再生されています。見ているものは全く同じですが、その人と一緒に見るというフィルターが加わるだけで、再生数が大きく伸びたのです。農林水産省の「ばずまふ」もかなりその部分が強いと思います。職員 2 人が顔を出して話しています。大臣と話してみる動画や法務省や環境省に行ってみた話など、内容はどれも普通にやっていると伝えにくい情報ですが、この 2 人がいるからこそ、伝わりやすく多く見られたのだと思います。大手企業でも自分を表現するみたいなことをしてうまくいっている例もあります。例えば、インスタグラムで「社長とそのグローバル支社の社長がズーム会議しました」という投稿をしている企業があります。役に立つかどうかという観点で見た時にはあまり重要な情報ではないと思うのですが、社長がちゃんと顔を出して表現をすることで、結構な数の「いいね!」を集めています。次に、自分たちが実際に顔を出すわけではないのですが、人格を表わしている手法もご紹介します。例えば鉄道関連の旅行会社では、沿線にある美しい写真を投稿してくれた人の写真を自社のインスタグラムアカウントでリポストしています。「〇〇さんが素敵なお写真を投稿してくれました!」という感じで、自ら個々の投稿者とつながりを持ちに行っています。SNS で一方通行の情報発信をしているだけだと人格が見えてこないのですが、個人と関わっていくことで、「自分たちのこともちゃんと見ているのだ」とか「中に人がいるのだな」という感覚が伝わるので、リアクションが良くなるのです。SNSではそういう運用の仕方が最近トレンドになっていて、アンケートを実施してみたり、「いいね!」をいっぱいもらったら「ありがとうございます」「嬉しいです」みたいなことを言ったりしています。自分たちが顔を出すわけではないのですが、「ちゃんと見ているよ」とか、「感謝しているよ」みたいな反応を返すことは非常に重要なのです。インフルエンサーを起用すると、その人が伝え方や親近感を担保してくれます。これに対して、SNS 運用はテクニックが必要になりますが、つながりを見せると「ちゃんと自分たちのことを見てくれている」ことが受け手に伝わり効果的になります。逆にネットに寄せすぎると下品なことをしたりして炎上する可能性もあるので、伝える内容は安易におもねらないことが肝要です。(2)情報の見せ方先ほどのヤフーのトップに挙がっていた電源タップの話は、もともとは企業の SNS 投稿ですけれど、電

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