連載セミナー深い情報をどう表現すべきか4.媒体とコンテンツの組み合わせの失敗例1.時不変なものが重要 36 ファイナンス 2025 Aug.が 24 万「いいね!」されて、SNS でバズり、SNS でSNS で展開している企業は結構ありますが、大抵は見られておりません。プレスリリースは“マス”向け媒体に対する情報提供で、初心者向けに情報を削いで出すものです。わざわざそのアカウントをフォローしている人にとっては「もう知っているよ」ということになってしまいます。また、テレビで有名な芸能人に会社の YouTube に登場してもらって、会社の説明をしてもらうのも大抵は成功しておりません。ネットという深い情報を求めているところなので、芸能人であってもその企業の宣伝をするだけではネットでは受けにくいのです。逆に、狭い範囲の“コア”向けコンテンツを“マス”向け媒体に提供しても興味は持たれません。先述のマスメディアはあまり具体的すぎる話を取り上げないということもそうです。また、ネットでは声優やユーチューバーが人気らしいということで、“マス”向けのテレビ CM などに起用している例などでは、マスメディア利用者から見ると、「誰これ?」という感じになり、受け入れられない場合があります。ネットの内輪ノリで成立していた人や話題を公式 CM など“マス”媒体に持ち込むと、表現の過激さなどが改めて取り沙汰され、炎上したりもします。ネットに絡みたいと思うと、上記のようなネットの情報を“マス”向け媒体に持ってくるか、ネットで”マス”向けの情報を提供するかになりがちですが、そうすると大抵失敗します。SNS によって、マニアックな話題でも誰かが受け取ってくれる状況になっているので、提供したい情報が深いのであれば深い媒体を選定し、初心者や万人向けに分かりやすく伝えたいのであれば、万人を対象とした媒体を選定するなど、情報と媒体の濃度を合わせることが重要です。情報を深くした上で、それをどう表現したらネットで受け入れられやすいのでしょうか。ネットでは「時不変なもの(時間的耐久性が高いもの)」が重要です。マスメディアでは情報の鮮度や新しさが重視されてきましたが、ネットでは時間的新しもあります。ある銀行の事例ですが、「ATM の操作音があまり好きではない」というコメントが X(旧 Twitter)で複数投稿されていました。そうしたコメントに対して、銀行の公式アカウントが、個人のアカウントに「ATMの操作音を変更しました」と直接コメントしたのです。公式アカウントから一個人に直接連絡するという驚きで、いろいろな人が「ありがとうございます!」とリアクションをしました。その結果、「公式アカウントから連絡が来たのか?ウソだろう!?」とリアクションをした人のツイートバズっているということでテレビの番組で取り上げられることになりました。これは先ほどと逆で、情報としては ATM の操作音変更という非常にコアな情報ですが、操作音に直接言及していた個人 SNS という“コア”向け媒体に、対応を直接コメントしたことで、“マス”向け媒体にも広がったのです。これは“コア”から“マス”に情報がさかのぼる形で波及しています。情報の深さの話はありませんが、地域情報も一種のコア情報であるといえます。地方での特殊な事例の盛り上がりが全国へ波及することも頻繁に起こっています。私が手伝っている企業で、地方自治体の公式スポットワークプラットフォームを構築・運営をするサービスを提供しているマッチボックステクノロジーズという企業があります。地方では働き手となる若者が少なくなって困っていますが、スポットワーカーによって、人手不足解消とともに地元企業を知ってもらうことにもつながる、非常に意味のある活動です。このデジタルを活用したスポットワークサービスが地方で成功していることがローカルの新聞に掲載してもらったことで、NHK や報道ステーションでの報道など全国放送に広がったという例もその一つです。よくある失敗は、“マス”向けコンテンツを“コア”向け媒体に提供しようとしたり、“コア”向けコンテンツを“マス”向け媒体に提供しようとしたりすることです。例えば、プレスリリースや会社紹介のようなものを
元のページ ../index.html#40