ファイナンス 2025年8月号 No.717
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連載セミナー体験の流れ〜カスタマージャーニー〜2.X(旧 Twitter)での例 34 ファイナンス 2025 Aug.いるね」ということもあるし、「この専門家が草一つで生態まで分かってしまうのか」という発見もあります。深い情報がゲームというフィルターを通じて親しみのある形で伝わるところが評価をいただいています。経済学、天文学、不動産、弁護士などいろいろな分野の専門家とコラボして、それなりに再生数を持っているという状況です。これも、初心者向けではない深く踏み込んだマニアックな情報なのですけれど、広く受け入れられるものとなっています。ネットに置くコンテンツは「初心者向けにしないといけない」と考えがちなのですけども、自分たちだけが知っているオリジナリティがある情報、自分たちの専門分野を分かりやすく伝えた方が伸びる傾向もみえます。これは X(旧 Twitter)も同じで、かなり深い話がうけるケースが結構あります。はんこ屋さんの「細かい文字をぎっしり詰め込んだはんこを製作しました。すごいでしょう!」という話が細かくてすごいでしょう!」という話が 1.3 万リツイートとなるのです。表現の仕方は工夫する必要がありますが、情報発信する中身はマニアックなものであることを恐れる必要はなく、むしろその方がうけるということです。一部補足しますが、ネットでも 1,000 万人登録など多くのフォロワーを持つ方もおり、そういう方はネット上の媒体ではあるものの、マスメディアと近い性質を持ちます。媒体の置き場以外にも影響力とターゲットでその媒体の性質は変わります。マニアックなものが 300 万回再生されるような拡散力を持つには、アルゴリズムが関係しています。SNS では、ゲーム系だったらゲーム系、美容系だったら美容系でフォローし合って、インフルエンサーを中心に、ジャンルごとにつながりが濃くなり、クラスターのようなものが形成されています。これが今のSNS のアルゴリズムは(1)動画などを投稿(2)そのコンテンツを見た人が、コメントや「いいね!」などのアクションを行う(3)アクションに対しアルゴリズムで評点がつけられ「この動画はこのクラスターに好評だ」と SNS が自動で判定してどんどん表示されやすくしていくという仕組みになっています。例えば、先ほどの将棋の動画の場合、「いいね!」やコメントが付くと、この将棋ユーチューバーをフォローしていない人でも、将棋との相性が良さそうな人にはどんどんお勧めしてくれます。評判が良さそうであれば SNS が勝手に拡散してくれる仕組みになっているのです。つまり SNS は「いいね!」や返信、クリックをしてもらうなどのアクションにまでつなげることが重要です。閲覧されるだけでなく、「いいね!」など具体的なアクションを伴うものの方がアルゴリズム的に評点が高くなっています。マニアックな情報の方が自分との接点が深いので、「俺もこれやったことある」とか「すごいね」とか、何らかの反応をしたくなるわけです。コアなファンにコアな情報を届けると、動いてもらいやすいということになります。一方、初心者向け情報は、「普通のことだよね」と読み流されてしまうので、アルゴリズム的にも不利になります。そこがマスメディアと SNS の立ち位置の違いです。マスメディアは対象になるトータルの母数は多いけれども、平均して 60 点から 70 点に感じられる情報になりがちでアクションにつながるような関心度合いは低めです。SNS はフォロワーから拡散されるというアルゴリズムなので、あまたあるコンテンツの中からたどり着いてくれた人であり、関心があるであろうという人に対して情報を発するという意識を持ち、アクションまでつなげる必要があるのです。マーケティング用語で「カスタマージャーニー」というものがあります。一個人がどうやって企業や対象への関心度を高めていくかという流れを表したものです。企業を例に挙げるなら、最初は「企業名を知らないが 1,200 万インプレッション、据付工事会社の「溶接SNS のつながり方です。SNS の情報拡散の仕組み

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