連載セミナー “マス”向け(マスメディア向け)と“コア”向け(ネット向け)の情報発信の違い“マス”向け(マスメディア向け)には、万人に対し“コア”向け(ネット向け)情報発信の例1.YouTube での例令和 7 年度職員トップセミナーファイナンス 2025 Aug. 33実際の動画の再生数を見ると、「駒の動かし方編」の動画は最大 16 万回再生ですが、「将棋のプロが本気で鬼殺しをやってみた」の動画は 50 万回再生です。なんとなく、最初の動画の方が、見る人の範囲が広いから伸びそうかなと思うのですけれど、それを見るのは、将棋を始めようかなと思っていて、将棋の動かし方を調べている人のみになるということです。世の中の人が絶対どちらかの動画を見ないといけないとすれば、そちらを見るのでしょうが、ネットでは興味のないものはスルーできるので、こういう初心者向け情報は見られにくいのです。SNS アカウントがたくさんある中で、わざわざ将棋コンテンツを探している人にとっては、深いコアな情報の方が求められることになります。企業や官公庁が公式アカウントや HP を作るときに陥りがちな議論として、「誰が見るか分からないから、みんなに受け入れられるような情報を置いたほうがいいのではないか」という結論になることがしばしばあるかと思います。それは「すべての人が見に来てくれる」ことを前提にしていて、「教科書的な初心者向け情報はスルーされてしまう」という観点が抜けているのです。つまり、「ネットはマニアックであるべき」という観点が必要になってくるのです。て 60 点か 70 点くらい取れるような情報が好まれます。将棋の話でいうなら、ニュースで目にすることもあると思いますが、マスメディアは「藤井聡太がタイトル戦で必ず食べるものとは」といったような感じで、将棋とは関係ないけれど、食という万人が好きそうな情報が取り上げられやすいです。マスメディアに将棋を取り上げてもらいたいと思ったとすると自分の言いたい「将棋が楽しい」ということだけを伝えるのではなくて、多くの人との接点になりそうなアピールポイントを探すことがマスメディアに情報提供する際に必要なことです。一方、SNS などを含めた“コア”向け(ネット向け)媒体では、ファンに対して 100 点を取れるような情報が好まれます。先ほど将棋の二つの動画の例をお示しましたが、将棋で再生数が非常に伸びている動画は 300 万回再生されています。「元奨励会員がハム将棋と裸玉で対戦してみた結果・・・」というタイトルのものです。将棋をしていない人にとっては、何を言っているのか全く分からないと思うのですけれど、300 万回も再生されています。“コア”向けにすることで見る人が減るのではないかと思いきや、逆に拡散力が増しているのです。YouTube で「日本科学情報」というチャンネルがあり、36 万人登録されています。テーマは科学の勉強のような、かなりニッチな内容の動画なのですけれど、「重力はすごい」という動画は 335 万回再生ですし、「インターネットの原理と仕組み」は 137 万回再生です。言語学にフォーカスした「ゆる言語学ラジオ」というチャネルも、かなりマニアックなコンテンツが並んでいます。例えば「どう違う?<パラッ>と<パラリ>」などです。これも多くの人に登録されているチャンネルです。農林水産省の公式YouTubeチャンネル「BUZZMAFFばずまふ(以下ばずまふ)」では「農林水産省あるある」という動画が 176 万回再生されています。かなりマニアックな情報だと思いますが、「普段接点のない職業の人がどんなことをやっているのか」という、ニッチな観点でネットだと興味を持たれるのです。「九州の農業を全力で紹介してみた」というコンテンツも53 万回再生です。私が Livedoor で作っている「ゲームさんぽ」というチャネル上の動画は、それぞれの分野の専門家がゲームに出てくる背景や構造物などを分析するという内容です。例えば、植物学者がゲームに出てくる草のグラフィックを見て、「このエリアは踏まれるのに強い植物が生えていますね」みたいなことを言うのです。実際、ゲーム内では大きな恐竜が出てきて地面を踏みつけるように動いていて、「ゲームがよくできて
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