0連載経済トレンド 懸念しているが対策の検討に至っていないどちらかというとそう思わないそう思わない懸念しており、対策実施済み懸念していない懸念しており、対策検討中わからない・生成 AI の活用予定ないそう思うどちらかというとそう思う生成 AI のリスク・課題生成 AI 導入の効果と展望(図表 8)生成 AI を利用するリスクに対する企業の対策状況※3(図表 9)企業に聞いた生成 AI 活用に伴うリスク・課題※4(図表 11)生成 AI の業務プロセスへの組み込み度合い(図表 12)2025 年の AI に対する投資予定額※6(%)0コラム 経済トレンド 134(図表 7)生成 AI のリスク・課題(図表 10)生成AI導入の効果別にみる企業の取り組みパターン※5情報漏洩・データプライバシー23.3ハルシネーション・信頼性18.017.89.99.86.35.1 14.83.6 13.3権利侵害法令違反17.1レピュテーションリスクプロンプトインジェクション21.020.4 18.1 16.9 19.0 12.6 39.4試験的に導入・検証中導入していないわからない(%)1025502,600 万~5,000 万ドル既存業務を前提として、自社ビジネスの効率化・高度化事業モデルから見直す姿勢で、業界構造の根本から変革通常の業務改善と捉えて IT部門 /経営企画中心経営課題と捉えて経営トップ自らが推進体制に参画要約や資料検索といった基本的な利用にとどまる音声・画像生成、新規ビジネス企画に踏み込むAI による完全な業務置き換えを志向AI が正式な業務として組み込まれているAI 活用を推進・定着させるためにガバナンスを重視(n=971)利用者としてのリスクサービス提供者としてのリスク社内情報漏洩等のセキュリティリスクが拡大する著作権等の権利侵害する可能性が拡大する倫理上不適切・偏見が含まれる可能性が拡大する人材育成の方針を見直す必要がある活用しないと企業としての競争力が失われる解雇や配置換えの必要がある(n=515)業務プロセスの一部として正式に組み込まれている(例:契約書作成時に必ずAIでチェックすること)業務担当者の判断で任意に利用できる状態期待を大きく上回る期待未満期待を大きく上回る:n=74期待未満:n=180日本全世界平均(n=1,803)2,500 万ドル以下(%)22.224.84.824.826.927.943.243.846.137.337.47.97.127.16.47.728.529.27.7(%)48.949.551.523.323.9 23.7 6.86.2 6.89.1 9.1 13.8 49.145.024.9 26.8 34.2 20304050607080751005,100 万~1 億ドル1 億ドル超(※ 3)売上高 100 億円未満が 26.3%、100 億円以上が 73.7%。調査期間は 2024 年 9 月~10 月。(※ 4)大企業 361 社、中小企業 154 社。調査期間は 2024 年 1 月~2 月。(出典)一般社団法人 JUAS 『企業 IT 動向調査報告書 2025』、総務省 『国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究(2024)』導入の目的意識チャンスの捉え方導入時の推進体制導入推進部門ユースケース導入する業務プロセス・導入方法AI による業務の置き換えは部分的にとどまる業務置き換え業務の組み込みAI 利用の判断が従業員に委ねられている導入のための土台作りガバナンスAI を既存業務の延長で捉え、最低限の整備にとどまる(※ 5) 売上高 500 億円以上の日本企業に所属する課長職以上かつ生成 AI に対して関与がある従業員を対象としたアンケート調査結果(日本の回答者数:945 名)。調査期間は2025 年 2 月。回答者の約 10% が期待を大きく上回ったと回答、約 51% が期待通り、約 25% が期待未満、約 14% が未評価と回答。(※ 6)売上高 5 億ドル以上の日本企業に属する経営層を対象としたアンケート調査結果。調査期間は 2024 年 9 月~12 月。(出典)PwC Japan グループ 『生成 AI に関する実態調査 2025 春 5 カ国比較』、BCG 『From Potential to Profit:Closing the AI Impact Gap』機密情報が入力され、外部に漏洩する出力された情報が誤っている(ハルシネーション)誤情報を信じて業務等に利用するコンテンツ(画像、動画等)が著作権を侵害する情報に倫理的または道徳的な問題が含まれる問題発生時の責任所在が不明確である各国の法規則に違反する不正な学習データが混入する多様性が喪失する技術的信頼性、透明性が不足するAI スキルを持つ人材が不足している雇用への影響が懸念される企業としての競争力が低下する業務効率化の機会が損失する人材の流出、AIスキルを持つ人材の採用難が進むビジネス改革が停滞する(既存業務の効率化にとどまる)生成 AI を利用するリスク・課題生成AIを利用しないリスク・課題(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。効果が期待未満効果が期待を大きく上回る約半数・企業が業務改革・ビジネス改革に至っていない原因には、生成 AI の利用に様々なリスクが伴うことが考えられる(図表 7)。・生成 AI を利用するリスクは、社内業務で利用する「利用者としてのリスク」と、顧客向けサービスで利用する「サービス提供者としてのリスク」に大別できる。両者への対策状況をみると、前者は対策が進んでいる一方で、後者は 4 割以上が「わからない・生成 AI の活用予定はない」と回答している(図表 8)。顧客向けサービスでの活用が進んでいない企業が多い原因として、社内に閉じた環境で生成 AI を用いる場合と比べ、社外向けサービスに用いる場合にはより慎重な判断が必要であることが考えられる。・生成 AI 活用に伴うリスクについて、情報漏洩や権利侵害等のリスクが拡大すると回答した企業はいずれも 7 割近くあり、多くの企業が生成 AI の利用リスクに対して懸念をいだいていることがわかる。一方で、6 割以上の企業で生成 AI を活用しないリスクが認識されており、社内向け・社外向けいずれにしても、利用しない(あるいは十分に活用できない)こともまた、競争力や生産性の低下といったリスクにつながると考えられる(図表 9)。・生成 AI を導入した企業で、導入効果が期待を大きく上回った企業と、そうでない企業を比較すると、効果が期待を大きく上回った企業では、要約や資料検索といった基本的な利用だけでなく、音声・画像生成機能の活用や新規ビジネス企画に応用しているほか、業務プロセスの一部として正式に生成 AI が組み込まれているなど、仕組みとしての定着が進展している傾向がみられ、生成 AI を単なるツールとしてではなく、業務変革の中核として捉えている(図表 10、11)。・昨今、企業の AI 投資意欲にも前向きな傾向がみられる。2025 年の計画では、AI へ相当規模の投資を予定している日本企業も少なくない(図表 12)。このように生成 AI のさらなる国内普及が見込まれるなかで、企業が期待以上の効果を得るためには、既存業務の延長線上での取り組みにとどまらず、一歩踏み込んだ、戦略的かつ本質的な生成 AI 活用が求められるだろう。ファイナンス 2025 Aug. 27
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