SPOT金融庁と地方の関係 20 ファイナンス 2025 Aug.*4) https://www.fsa.go.jp/common/about/fsapamphlet.pdfめられるか、そのためには先行してどのような人的投資をすべきか、といったリスクテイクも考えています。例えば、取引先の社長は資金繰りだけでなく、新しい商品開発や人材採用、販路の拡大など、多様な課題に直面しています。銀行も、そうした顧客の経営課題に寄り添わなければ、企業との信頼関係を築くことができません。我々も、銀行に対し、単に「運用は大丈夫ですか」あるいは「リスク管理はできていますか」といった監督当局としての心配事ばかり気にして話をしてしまうと、銀行側との距離が生まれてしまう。経営トップはリスク管理だけをやっているわけではなく、経営全体を見ているわけです。だからこそ、監督業務においては、「経営課題とは何か」という視点を持つことが重要であり、そこまで踏み込まなければ、金融機関の経営者から信頼を得るのは難しいのではないかと思います。服部:先ほど地方銀行のお話も出ましたが、財務省の地方支部局である財務局と、金融庁との業務の棲み分けについてもお伺いしたいです。金融庁のウェブサイトでは、「金融庁長官は、法令に基づき、地方の民間金融機関等の検査・監督に係る権限の一部を財務局長れた権限に係る事務に関しては、金融庁長官が財務局長等を指揮監督することとなっています」と説明しています*4。また、財務局は独自に採用をしています。新発田:おっしゃるとおり財務局というのは財務省の地方支部局です。信用金庫等の地域金融機関の監督業務についていえば、報告や届出等の日常的なやりとりはそれぞれの金融機関にとっていちばん身近にある財務局や財務事務所に担当してもらっています。そのうえで、足元の金融経済環境において監督当局として何を優先し、どこにリソースを振り向けるかということは、金融庁で方針を決め、全国に指示しています。一般論で語るのは不適切かもしれませんが、金融庁は地方の実態に触れる機会が少ないと感じることがあります。永田町で国会議員の先生とお話しする中で感じるのは、毎週のように地元やそれ以外の地方に行っていらっしゃるので、地方の経済や企業の実態について肌感覚で把握されているようにお見受けします。一方、金融庁で、大手の日系金融機関や外資系金融機関など、グローバルな金融の世界とだけ接していると、ローカルな世界で生活する人たちがどう考えていて、どういう状況にあって、ということはややもすれば意識の外に置かれる可能性があります。例えば、地元の労働力不足が飲食・宿泊業の稼働率にどう影響しているのか、あるいは、半導体産業の人材確保の動きが地元企業にどう影響しているのか、賃上げだって、今はメガバンクだったら初任給大幅アップなど景気が良い話もあるでしょうが、中小企業だったら必ずしもそうではなくて、適切な価格転嫁なしには身を削ることになるわけです。現場の情報は金融庁にとってやはり見えづらくなっている部分はあるので、自分たちは意識してそういう情報を取らないと、間違えてしまうなと感じます。服部:金融庁で採用された職員の方は、東京以外に行くことはあまりないでしょうか。新発田:担当業務にもよるところはありますが、金融というサービスが全国津々浦々まで提供されている以上、出張等で地方に行くことはそれなりにあり、具体的には、金融機関の経営層の方々から経営課題や取引先の業況について直接ヒアリングをしたり、金融庁の重要な政策課題を直接説明して意見交換したり、ということをやっています。私自身、地域金融を担当していたときは、40 近い都道府県を訪れました服部:例えば財務省総合職だったら 3 年目に東京以外に行くとか、日銀でも 1 年目に同様の経験をするなどの話はありますよね。新発田:金融庁に在籍する職員の約 4 分の 1 は地方の財務局から人事交流で来られた方ですが、金融庁採用職員のキャリアパスという点ではそういった決まりごとはまだないですね。人事「交流」なので本来は財務局からも人を受け入れる代わりに、財務局にも人を出す双方向でのやりとりがあるべき姿だと思いますが、何度も申し上げているように、かつて恒常的に人手不足だったこともあり、財務局の金融部門に出向して地方の経済や金融の状況を肌で感じるという経験をした(財務省の地方支分部局)等に委任しており、委任さ
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