ファイナンス 2025年8月号 No.717
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SPOT証券取引等監視委員会と公認会計士・監査審査会 18 ファイナンス 2025 Aug.おいて国際的な役割を果たす次官級のポストとして作られました。これも役所にいると自然に知るのですが、意外と書いていない気がします。新発田:そうですね。金融庁の金融国際審議官は、まさに財務官のカウンターパートにあたります。バーゼル銀行監督委員会や証券監督者国際機構といった国際機関での議論に日本代表として参加するのが、金融国際審議官です。有泉さん(前金融国際審議官)は保険の国際機関である IAIS(保険監督者国際機構)の実質的なトップ(執行委員会議長)を務めておられますが、歴代の金融国際審議官もさまざまな国際機関のトップや議長職等の要職を務められる方が多く、それだけ国際的にもレギュレーターとして信頼されている方が活躍されてきたということだと思います。G7 はもちろん財務相の会合ですが、金融分野をサポートするために国際部門の幹部が必ず同行しています。服部:ちなみに、以前は、財務省と金融庁の担当大臣が異なることが多かったのですが、現在は加藤財務大臣が財務省と金融庁の両方を担当しているなど、金融庁と財務省を担当することが定着しています。これをどう思われますでしょうか。新発田:財務大臣と金融担当大臣の兼務の当否について私のような下僚がコメントすべきではないと思います。そのうえで、財金分離以降の金融行政の歴史を振り返ると、その時々の政策課題にどう対応するかという中で、それぞれの政権が適切にご判断されてきたということに尽きるのだと思います。その前提として、財金分離をどこまで徹底するのか、というところがあるわけですが、金融行政のプロフェッショナルが育たないと、結局、民間金融機関や市場関係者などとうまく議論ができないし、金融行政を巡る政策課題はかつてと比べて飛躍的に複雑かつ専門的になっていることもあわせ考えると、金融行政の分野で国益のために働く人材を育てていくのは、私は必要だと思います。他方で、例えば、日本の不良債権問題への対応が経済政策の最重要課題であったときは、竹中平蔵金融担当大臣は経済政策担当大臣と兼務されていたわけですが、その後、米国投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻に端を発したグローバルな金融危機が深刻化すると、そうした議題が G7、あるいはまさにそうした問題を議論するために創設された G20 で議論されることになります。その時に、日本政府の代表として参加される財務大臣が金融についても議論しなければならないこともあったわけですから、その頃から民主党政権の時期を除いて基本的に兼務が続いているというのは、そういったことも念頭においての工夫なのではないでしょうか。服部:ここまで話に出ませんでしたが、金融庁の有する重要な機能に、証券取引等監視委員会がありますね。教科書的には、1991 年に起こった大口顧客への損失補填問題など証券会社の不祥事をきっかけに、1992 年に証券取引等監視委員会が設立されたという経緯があります。米国の証券取引委員会(SEC)をモデルにしたともいわれています。新発田:証券取引等監視委員会はまさに資本市場の番人として、市場の透明性や公正を確保するために、市場監視の仕事をしているところです。市場でおかしな取引が行われれば直ちに把握し、調査を始めます。例えば、上場企業が M&A をすることを当該企業の関係者から聞いて、発表前に株式を買えば、インサイダー取引規制違反になりますが、そういった法令違反は必ずバレると思ってください。証券取引等監視委員会には市場分析審査課がありまして、ここにマーケットのありとあらゆる情報が入ってきて分析しています。そのうえで、インサイダー取引の疑いがあれば取引調査課に、粉飾決算の疑いがあれば開示検査課にリレーされ、法令違反が認められれば、課徴金納付命令の勧告が行われます。より悪質な行為については、さらに特別調査課にバトンが渡されます。ここは国税の査察(マルサ)と同じで、犯則事件の調査を行い、刑事告発をするところです。服部:図表 3が組織図になりますが、証券取引等監視委員会の事務局で 400 名弱おり、人数は多い印象ですね。新発田:市場規模や機能の違いがあるので単純な比較は困難ですが、米国の証券規制当局である証券取引委員会(SEC)は 4,000 名近くおりますので、金融システムにおける資本市場の役割が大きくなれば、市場監視当局が果たすべき役割も大きくなるように思います。あともう 1 つ、金融庁には、公認会計士・監査審査

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