ファイナンス 2025年8月号 No.717
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SPOT総合政策局と大臣官房 16 ファイナンス 2025 Aug.にするという目標を掲げたのが 2015 年度の採用からなので、当時、相応の人数を採用する省庁の中で、どの省庁よりも先駆けて取り組んだこともあり、日経新聞で取り上げてもらったこともあります。服部:金融庁の特徴として、相対的に課が少ないということも霞が関ではたまに指摘されます。新発田:これは大蔵省から金融検査・監督機能が切り離され、約 400 人という小所帯で金融監督庁がスタートしたという経緯に加え、増大する政策課題に対応するために、金融庁の職員数は大幅に増員されてきた一方、課の数はほとんど増えていないという点が原因として指摘できます。霞が関の組織改正のお作法は、基本的にスクラップ・アンド・ビルドなので、新設組織の財源として差し出すべき組織がそもそもない比較的小さな役所では政策課題が増えているにもかかわらず簡単に課の数を増やせません。これは構造的な欠陥だと思います。その結果として、当たり前のことですが、一つの課あたりの人数が増えるということが起こっています。霞が関の課長といっても、小さい課では 10 名ちょっとくらいのところもありますが、金融庁では、課によっては課長の下に 100 人くらいの課員がいるケースも少なくありません。例えば、リスク分析総括課は、職員が 300 人近く所属しているはずです。そうなると、課長 1 人だけでは到底部下職員のマネジメントはできませんので、課の中にある、より小さな室やチームといった少人数のグループ単位でグループリーダーを設け、日常的なマネジメントをある程度任せるようにしています。また、金融庁の保険課も 100 人近くが所属していますが、大蔵省時代は保険「部」で、生保、損保それぞれ担当する 2 つの課と保険制度の企画立案を担当する室がありました。しかし、今では 2 つの課が 1 つに統合され、「保険課」となり、企画部門は企画市場局の保険企画室に移ったものの、モニタリングを担当する人たちも同じ保険課にいる状況です。したがって、保険課の中に課長の下にグループリーダーが 7 人おり、その人達がだいたい 10 人程度のグループを率いているという感じです。服部:今の金融庁の幹部は、元大蔵省の人ですが、金融庁でもそれなりの新卒をとって人材が育っていることを踏まえると、それもどこかで変化する可能性はありますね。新発田:いずれ変わると思います。ただ、今の幹部は元大蔵省と言っても、皆相応に金融行政の経験はあるので、ほとんど財政しかやったことがない人が金融庁の幹部になっているわけではありません。結局のところ大切なのは、経験の中で培われる見識と行政官としてのセンスなのだと思います。その点、現在、金融庁で採用された職員が第一線の課長クラスに登用され始めていて、一緒に働いていますが、皆さん大変頼もしいです。他方で、金融庁の中で純粋培養で育てれば良いのかといえばそんな簡単な話ではないわけです。財務省だけでなく、内閣官房や経産省、厚生労働省など他省庁でもいいですし、民間セクターでも、国際機関でも、アカデミアでもいいのですが、やはり出向することで視野を広げることは不可欠だと思います。自分自身も、金融行政に加え、主税局や JBIC に出向させてもらうことで、金融庁にいるだけでは得られない経験ができたと感謝しています。服部:財務省と金融庁の組織を比較した時に、私として印象的だったのは、金融庁には大臣官房がないという点です。「大臣官房」という表現は、役所で働いたことがない人に説明することが難しい言葉の一つですが、役所の資料などでは、省全体の総合調整や交通整理を担う部署として説明されます。財務省の場合、大臣官房では、国会等の対応をする文書課や人事を担う秘書課、リサーチなどを担う総合政策課などがあります。他の省庁には大臣官房が存在しますが、金融庁にはないですよね。新発田:そうですね、財務省と金融庁の組織上の違いの一つは、官房という組織がないことです。省庁の内部組織の機能は、官房あるいは原局に大別されます。官房については説明がありましたが、企業のコーポレート部門と同じで組織を組織として機能させるための要です。原局とは実際の行政事務を担う局を指します。金融庁には大臣官房がないのですが、その代わりに、かつて、総務企画局という、官房部門と原局としての企画部門を一緒にした局がありました。

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