ファイナンス 2025年8月号 No.717
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SPOT  図表 2 外部専門家登用の状況(外部専門家の採用・登用等)(単位:人)新発田龍史 審議官に聞く、金融庁の過去と現在(後編)2023 年 3 月 1 日現在3967381442163782024 年 3 月 1 日現在437039145197368ファイナンス 2025 Aug. 15(出所)金融庁弁 護 士公 認 会 計 士不動産鑑定士アクチュアリ-研 究 者情報処理技術者金融実務経験者計すが、意識的に採用数を増やしました。多様化・複雑化する行政課題に的確に対応するためには、専門性を涵養することも大切ですが、同時に、官民問わず、外部の環境でも通用するかどうか力を試し、視野を広げることも大切です。幸いなことに金融庁には人事交流のリクエストも多いのですが、かつては、それに応える余力がなく大変残念な思いをしたこともあります。もともと、金融監督庁の発足当初は 400 人くらいで、当時、大蔵省の銀行局や証券局で監督などを担っていた人の一部が移ることでスタートしました。その後、不良債権問題をはじめとするさまざまな行政ニーズに対応するため、職員の人数を増やしてきたわけです。最初の 10 年近くは、毎年 100 人くらいの急激なペースで増えていましたが、もちろん全てを新卒で採用することはできないので、他省庁からの出向や、中途採用などを通じて陣容を強化してきました。このため、金融庁は、組織が急成長し、働いている人材の構成が多様であるという点で、他の霞ヶ関の組織と比べ、ベンチャー企業的な色彩が強いかもしれません。「前編」では、金融庁で大きな組織再編を行った話をしましたが、伝統ある役所だったらこれまでの歴史的な経緯もあり、局を簡単に再編することはなかなか容易ではないと思います。金融庁は新しい組織だからこそ、しがらみなく、柔軟な対応ができる良さがあるように感じます。服部:金融庁では、弁護士などの出向者も多いのが特徴ですよね。特に市場課や信用制度参事官室などに多いと聞きます。一方、公認会計士の出向者は開示課に多いと聞きます。新発田:弁護士は多く、裁判官や検事も入れると法曹資格者が 60 名程度はいるのではないでしょうか。金融商品取引法を作った頃は、パートナーになる手前の割とシニアな方が来ていましたが、最近では金融分野での専門性を身につけるために若手の方が来られることも少なくありません。会計士も多く、70 名程度の方が働いています。具体的な業務については、採用される部局によってまちまちですが、弁護士は金融商品取引法等の法令について、外部からの照会に対応するだけでなく、制度改正の実際のプロセスに関わることで、改正される条文の字面だけでなく、背後にある考え方も含めて理解を深めることができるため、大変得難い経験になったという話をよく聞きます。また、公認会計士の中には、コーポレートガバナンス改革の担当チームの一員として特定のテーマを担当する方もいれば、会計や監査の専門的な国際会議に日本代表として出席する方もいます。服部:民間や他省庁からの、金融庁への出向期間は大体 2~3 年間くらいでしょうか。新発田:基本的には 2 年が多いと思いますが、仕事にやりがいを感じていただけるからなのか、それ以上いらっしゃる方もいます。また、一度ならず二度出向される方もいます。あまりに色々なバックグラウンドの方がいるので、どこから来ているのかいちいち気にすることはありません。服部:財務省に比べるとより出向者が多い印象ですね。新発田:特にモニタリング部門、昔の検査部門は、民間金融機関出身の中途採用者が多いかもしれません。検査チームを率いる主任検査官クラスは、半分ぐらいは国家公務員試験を受けて役所に入った人ですけど、もう半分くらいは銀行で働いていた人などです。服部:そういった方々は、国家公務員試験を受けて入ってくるということでしょうか。新発田:中途採用の場合は、選考採用という形式で、書類審査と面接試験で採用します。服部:現在の職員の男女比はどのくらいでしょうか。新発田:金融庁全体における女性比率は、ようやく1/4 を超えてきたところでしょうか。私が採用を担当していた 2010 年に、新卒採用に占める女性の比率を現在の総合職・一般職の区分ともに 5 割にするという目標を掲げました。総合職では、翌年の 2012 年入庁者の採用では 4 割、さらにその翌年には、バトンを引き継いだ後任たちのチームの成果ですが、5 割を達成しました。霞が関全体で総合職採用の女性比率を 3 割

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