ファイナンス 2025年7月号 No.716
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連載各地の話題 [熊野古道 馬越峠の石畳][日本の棚田百選 丸山千枚田]「伊勢に七度、熊野に三度」江戸時代にはこんな言葉があったそうです。東紀州は、当時の人々が何度でも訪れてみたいと思う憧れの地でした。2004 年 7 月に紀伊山地の三つの霊場(「熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)」「高野山」「吉野・大峯」)とそれらを結ぶ参詣道が、世界遺産に登録されました。その霊験あらたかな熊野三山と、「お伊勢参り」で有名な伊勢神宮を結ぶ道が「熊野古道 伊勢路」であり、道中には数多くの名所や峠があります。尾鷲市は、伊勢と熊野三山のちょうど中間あたりに位置しており、市内には 4 つの峠があります。今回その 1 つで尾鷲市の北部にある「馬越峠」を歩いてみました。この峠は、尾鷲ヒノキと見事な石畳が続く美しい峠として知られています。初心者向けのコースとして案内されていましたが、勾配の急なところもあり汗をぬぐいながら必死に歩き、馬越峠から少し脇に入って天狗倉山の頂上になんとかたどりつきました。そこは、熊野灘を一望できる絶景スポットで疲れを吹き飛ばしてくれました。江戸時代に起きた伊勢神宮への参詣ブームから数百年が経過し、昨年世界遺産 20 周年を迎えた今、あらためて熊野の聖地をめぐる旅が注目されています。ここからは、伊勢路に沿って名所やグルメをいくつかご紹介していきます。熊野市紀和町丸山地区には、標高差約 160m の斜面を利用した 1,340 枚もの水田が連なる日本最大規模の棚田があり、日本の棚田百選にも選ばれています。この棚田は、1601 年に 2,240 枚の田があったという記録が残っていますが、昭和の稲作転換対策による杉の植林、過疎・高齢化による後継者不足のため耕作放棄地が増加し、平成の初めころには 530 枚まで減ってしまいました。そこで棚田の復元を目指し、1993年に丸山地区住民による保存会が結成され、810 枚の復元に成功しました。現在は 1,340 枚の棚田が維持保存されています。また、復田された田を利用して稲作体験などができる、丸山千枚田オーナー制度も実施されています。熊野市にある花の窟神社は、720 年(奈良時代)に記された日本最初の歴史書である『日本書紀』の「国産みの舞台」に登場する日本最古といわれる神社で世界遺産に登録されています。ここは神社ですが社殿はなく、高さ約 45m の巨石そのものを御神体とし、季節の花々で神をお祀りしたことから花の窟の名が付けられたと考えられています。毎年 2 月 2 日と 10 月 2 日には、日本一長いともいわれる長さ 170m もの大綱を御神体と境内の隅にある御神木に渡す例大祭(お綱掛け神事)が行われます。尾鷲市ファイナンス 2025 Jul. 953  管内の世界遺産・観光名所・ グルメ(2)丸山千枚田(3)日本最古の神社 花の窟神社(1)熊野古道伊勢路

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