ファイナンス 2025年7月号 No.716
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連載セミナー 令和 7 年度職員トップセミナーうようなら、ちょっと考えてみる、という対応をすれば十分に使い物になると思います。要約や翻訳も得意です。990 点満点の TOEIC では、3 年前ぐらいで AI は 950 点を超えたと言われているので、今ではほとんど満点に近いと思います。私も外国人と英語のメールのやり取りがあ るので す が、ちょっと微妙な表現については、生成 AI の英語を使って、最後は自分でチェックする、ということもやっております。論文についても、日本語で論文を書いて生成 AI に訳させてみると、だいたい言いたいことが英語で書かれているのです。英語が苦手な日本人としては、生産性を上げるという目的からすれば、よい道具だと思います。ChatGPT の改良版 GPT-4 は、先ほど申し上げたように月 20 ドル支払う必要があるものですけれども、登場してすぐ、2023 年頃にアメリカの司法試験、医師国家試験に合格しています。日本の医師国家試験にも合格しています。日本の司法試験に合格できないのは、やはり欧米の生成 AI なので、日本の法律に関する知見があまりないからだと思います。今、日本の生成 AI が日本の司法試験合格を目指して頑張っているとのことです。さらに、OpenAI 社の最先端の「o1(オーワン)」及び「DeepSeek」という中国製でちょっと話題になっている生成 AI、この 2 つを使って、今年の東大の二次試験、理科一類から文科三類まで全部を解かせて採点したら、全部合格点に達したとのことです。こういうペーパーテスト系に関しては、今や AI は十分合格点レベルに達しているのです。私たちは発展目覚ましい生成 AI とどう付き合っていったらよいか、ということについては、私自身は自動車の比喩で考えるのがよいと思っております。それまではみんな馬車で移動していたのですが、世界最初の自動車である T 型フォードが登場して、すごく便利だったため、いろいろな会社が瞬く間に真似をして自動車を作り始め、現在の自動車社会に至っております。規制しようが何をしようが、作ることができると分かってしまうと、作り方は教えてくれなくても、技術というものはできてしまうのです。昔、出来上がった鉄砲を入手した日本の技術者が、見よう見まねで鉄砲が作れるようになりました。生成AI についても、出来上がった生成 AI があれば、作り方を教えてくれなくてもできるようになるので、禁止は意味がないと思います。自動車については、免許もないし、制限速度もない、そういうところからルールを作り、今の自動車社会ができました。今でも死亡事故が一定数ある危険な機械ではあるのですが、メリットとデメリットを考えて、自動車を道具として使ってきたのです。生成 AI についても、統計的な処理という側面や悪用される恐れもあるわけですけれど、とても便利な道具で、生産性を非常に上げるので、好むと好まざるとに関わらず、道具として使っていくということかと思います。先ほど少し言及した DeepSeek は、中国の会社が作った生成 AI で、2024 年の冬に発表されたものです。DeepSeekはオープンソースであるという特徴があり、これは他人がプログラムを読めるということです。ChatGPT でも公開していないのに、中国の会社が公開するのは画期的です。技術的なポイントは「強化学習」と「蒸留」です。蒸留という技術自体は生成 AI を勉強している人なら誰でも知っているものですが、DeepSeek はそれをうまく使って、高性能の生成 AI をとても安価で作ったことが話題になっています。データが多ければ多いほど性能が良くなるという経験則が生成 AI にはあります。だから OpenAI 社はお金を投資家からたくさん集めて、データを増やして性能を良くしています。たくさんデータを集めると、最高性能のコンピューターが必要となります。そのた生成 AI とどう付き合うかファイナンス 2025 Jul. 855.要約や翻訳も得意GPT-4 等の能力DeepSeek とは

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