ファイナンス 2025年7月号 No.716
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があります。今申し上げただけでも 3 つの機能を知能と言っており、これ以外にも、人とうまくコミュニケーションするとか、お金を数えるとか、いろいろなことが知能であると言われております。何ができることが「知能がある」ということなのか、たくさんありすぎて数え上げることが事実上できないのです。私は幼稚園の時に漫画「鉄腕アトム」を見て、将来はこんなロボットをつくる仕事がやりたいと思って結果的に AI の研究者になりましたが、何ができると「人工知能ができた」と認めてくれるのか、よく分かっていないのです。鉄腕アトムみたいな、誰が見ても、誰が付き合っても、このロボットは人間並みの知能があるというロボットができた暁には、そのロボットの能力が知能だと言えます。知能は人間の中にあるから客観的に取り出すことはできないのですが、もし人間の外に知能があれば、ようやく客観的に知能について議論できるのではないか、そういう夢や野望を AI 研究者は持っています。AI 研究は「知能を持った人工物」を作るという工学的な目的と、その過程を通じて知能とは何かを理解するという科学的な目的の両方を持っているのです。今、AI がブームなので、AI と言った方が売れると思えば、これまでアプリと言っていたものを AI と言う傾向はあります。それをあまり責められないのは、そもそも AI というものの定義が明確ではないから、という面があると思います。80 年代にワープロで、かな漢字変換が出てきた時は最先端の AI と言われましたが、今となっては、あ「人間の概念を変える人工知能」としました。よろしIntelligence という英語の日本語訳です。最近は日本AI の分野では「自然言語処理」と言います。また、こんにちは、ご紹介いただきました松原です。本日は“AI(人工知能)”の最近の話題をお話したいと思います。タイトルは、最近の進歩した人工知能が人間の概念を変えつつあるという見方を踏まえて、くお願いいたします。本 日 の テ ー マ で あ る「 人 工 知 能 」 は、Artificial でも頭文字を取って“AI”と言われることが多くなったと思います。最初にお断りしないといけないのは、「AI とは何か」ということが、専門家の間でもコンセンサスがないということです。私が AI を研究し始めた 40 数年前、大学院の時にも先輩たちに「ない」と言われましたが、未だにありません。「知能を人工的に実現する」という目標はかなりはっきりしていますが、「知能とは何か」ということは、辞書を読んでみても分かったような、分からないような説明なのです。知能にはいろいろな側面があります。例えば、言葉を話す、読んで理解するという側面です。コンピューター言語である「人工言語」に対し、我々が使っている日本語や英語を「自然言語」と呼んでおり、これを資料を目で見て理解するという「画像認識」、耳から入ってきた情報を理解、認識するという「音声認識」 80 ファイナンス 2025 Jul.令和 7 年 4 月 17 日(木)開催講 師演 題はじめに人工知能(AI)とは何か松原 仁松原 仁 氏 氏(京都橘大学工学部情報工学科 教授)(京都橘大学工学部情報工学科 教授)人間の概念を変える 人間の概念を変える 人工知能人工知能財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute連載セミナー令和7 年度職員トップセミナー

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