連載海外 ウォッチャーブエノスアイレス市近郊のラプラタの盆踊り大会にて同僚と(右端が筆者)ンチン社会に着実に根を下ろしてきました。各地で日系人のコミュニティが形成され、盆踊り大会や七夕祭りなどのイベントも盛大に開かれています。日本の風物詩とも言える行事を地球の真裏で体験すると、その長い歴史に思いを馳せずにはいられません。ちなみに、写真のラプラタ盆踊りでは、定番曲の他にもアップテンポで動きの激しい曲も含まれていて、踊っていてかなり息が上がるのは新鮮でした。それもまた、長い歴史を踏まえて日本の伝統をアルゼンチンに合わせた形なのかなと思ったりもします。来年 2026 年は、最初の日系移民がアルゼンチンに定住してから 140 周年の節目の年となります。在アルゼンチン日本国大使館としても、日系人コミュニティと連携して記念の行事を行う予定で、これを機に日本とアルゼンチンの関係がより深まっていくことが期待されます。コラム 3 アルゼンチンの日系人社会アルゼンチンには約 65,000 人の日系人がいるとされており、これは南米でブラジル、ペルーに次ぐ規模となっています。1886 年に牧野金蔵氏が中西部コルドバに定住したのが第一号とされ、それ以来アルゼここまでミレイ政権発足の背景や政権交代後の取り組みについて説明をしてきましたが、最後に多分私見を交えつつ総括することで、結びとしたいと思います。ミレイ政権の本質は、多くの政府関係者が「大統領がチーフエコノミストだ」と話している点に凝縮されているように思っています。政権幹部も金融分野での実務経験が豊富な人材が多く、既得権益層に振り回されずに一貫した政策を遂行できているのは確かな強みでしょう。そうした点が、米国をはじめとする先進国や国際機関からの支持を得ている要因になっているのかもしれません。ただし、多くの政策が大統領令に基づいて行われており、また外交面で、ジェンダーや人権、環境といった分野で国際社会のマルチの合意を軽視するようにも見える点には留意が必要です。こうした点も含めて、現在のアルゼンチンで起きているのは、エコノミストが自身の信念に沿った政策を、周囲の雑音を気にせずに忠実に実施したらどのようなものになるのか、と言えるように思います。アルゼンチン人からは「この国は数年単位では目まぐるしく動くものの、何十年という期間では同じ場所から動いてない」という声も聞きます。過去のアルゼンチン経済に関する資料を見ると、たとえ何十年も前の出来事でも、ここ数年で経験したのとほぼ同じようなことが書かれていて、既視感で思わず笑ってしまいそうになります。他方で、「過去の繰り返しではないか」という批判に対して現政権は、「財政・金融・為替の全ての秩序が整ったのは今だけだ」と強調しており(第 5 節参照)、その主張も一理あるように思われます。エコノミストが率いる国家がどこにたどり着くのか、その答えが出るのにはもう少し時間がかかりそうですが、その行く末は経済政策立案に関わる全ての当事者にとって知る価値があるように思います。BNP パリバ証券の河野龍太郎氏は、財務総合政策研究所の「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」報告書において、グズネッツの「4 種類の国」 78 ファイナンス 2025 Jul. 8 8 結び
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