ファイナンス 2025年7月号 No.716
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0連載海外 ウォッチャー120110100908070602021 年1 月4 月7 月が高く出やすいとされています。一般的にイメージされる貧困の割合としては、極貧率が実態に近いとされています。10 月 2022 年4 月7 月1 月10 月 2024 年4 月7 月1 月極貧率Ⅰ Ⅱ2018Ⅰ Ⅱ2019Ⅰ Ⅱ2020Ⅰ Ⅱ202110 月 2025 年4 月1 月Ⅰ Ⅱ2022Ⅰ Ⅱ2023Ⅰ Ⅱ2024(注)いずれも季節調整済み。政権交代直前の 2023 年 11 月の数値を 100 に基準化。(出所)国家統計局(INDEC)データから作成(出所)国家統計局(INDEC)経済活動指数建設活動指数製造業生産指数鉱業生産指数10 月 2023 年4 月7 月1 月(%)60貧困率5040302010Ⅰ Ⅱ2017各種月次指数の推移貧困率・極貧率の推移*13) アルゼンチンでは貧困率を算定する際に、最低限度の食糧を購入するのに必要な費用に加えて、一定程度の交通費や通信費等も加味するため、貧困率2023 年 12 月には 25%だった月間インフレ率(消費者物価指数の上昇率)が 2025 年 5 月には 1.5% まで低下し、2020 年 5 月以来 5 年ぶりの低水準となりました。2023 年は 211%だった年間インフレ率も 2024年には 118%となり、2025 年は 20%台にまで低下すると予想されています。依然として高い水準ではあるものの、伝統的にインフレに悩まされたアルゼンチンとしては大きな進歩と言えます。特に 2025 年 4 月に外貨・為替規制を緩和したにも関わらずインフレ上昇を招かずにいる点は、良い意味でのサプライズとなっています。内訳では、補助金削減の影響で光熱費の価格上昇が高い一方、飲食料品の値上がりは相対的に小さいことが特徴となっています。公共事業の停止や各種補助金の削減など緊縮的な政策が行われたこともあり、2024 年上半期は、干ばつに悩まされた前年よりも各種指数が悪化し、特に建設業・製造業の落ち込みが顕著なものとなっていました。しかし、干ばつから回復した農業や豊富な天然資源の開発が下支えとなり、また様々な規制改革の実施も奏功したのか、下半期からは回復傾向となります。最終的に 2024 年の実質 GDP 成長率は前年比▲ 1.7% となりましたが、2024 年半ばまでは▲ 3%程度の落ち込みになるというのが大方の見方だったため、回復のペースは想定よりも高いと言えます。経済活動の推移と合わせる形で、2024 年上半期は貧困率*13 も悪化しますが、下半期には大幅に改善します。行政改革に伴う公務員削減などで正規雇用は減った一方、非正規の分野で雇用増加と賃金上昇が起こっていることが背景にあるようです。アルゼンチンの貧困問題を考える際には、世代ごとの格差も大きな論点になっています。直近(2024 年下半期)の政府統計では、0~14 歳の貧困率は 51.9%である一方、65 歳以上は 16.0% となっています。この要因は、経済規模の割に年金制度が手厚く整備されているためともされています。財政健全化を進める中でも児童手当を増額しているのには、こうした世代間格差が背景にあります。足元で、効率的な社会支援の結果として若年層の貧困率が改善しているという民間の調査結果もありますが、限られた財源の中でいかにして公平に社会福祉政策を実現していくのかは引き続き課題となりそうです。 76 ファイナンス 2025 Jul.(3)貧困率の低下(1)インフレ低下(2)経済活動の回復

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