連載海外 ウォッチャー(出所)アルゼンチン中銀、Ambito Financiero1,6001,3501,1008506003501002023 年 1月外貨準備(億ドル、右軸)パッケージの表明を得ます。5004504003503002502005 月9月政権交代による通貨切り下げ2024 年 1 月5 月IMF との新プログラム合意為替規制緩和9 月2025 年1 月ブルーレート(ペソ /1 ドル、左軸)為替ギャップ最大 200%干ばつに伴う外貨減少5 月為替レート(ペソ /1 ドル、左軸)為替・外貨準備の推移*10) 従来は税務申告の際に、所得や経費に加えて個人消費や資産増減を申告する必要があり、また小売店等も個別の販売情報を税務当局に報告する義務が課されていました。新たな制度の下では、個人消費や資産増減に関する情報の申告は不要となり、さらに小売店等の情報提供義務も廃止・緩和されました。*11) IMF との間で 4 年総額 200 億ドルの拡大信用供与措置に合意するとともに、世界銀行グループ・米州開発銀行グループから 3 年総額 220 億円の支援統的な金融政策が実施できない状況になっていました。政権交代後の財政改革の結果、中央銀行による財政ファイナンスは停止します。さらに流動性調整のために発行されていた中銀の有利子負債を短期国債に置き換え、財政赤字の責任が国庫にあることを明確にします。その他にも、国債に付与されたプットオプションを金融機関から買戻すなど潜在的なインフレ要因の解消に取り組み、中銀のバランスシート健全化を進めます。また、これまでの経済危機で度々預金凍結といった憂き目にあってきたアルゼンチン人は、海外口座や所謂タンス預金の形で、国内金融システムの外に多くの外貨建て資産を保有しているとされます。こうした資金の取り込みを狙い、自由推進法とともに成立した税制関連法に、未申告資産の申請に対する罰則を時限的に免除する措置が盛り込まれます。この結果、ドル建て預金が 200 億ドル近く増加しました。さらに2025 年 6 月には、未申告資産を消費に使いやすくするために、簡素化された所得税申告制度を新たに導入しました。*102018 年の危機以降、様々な外貨・為替規制が導入されました。個人の外貨購入量の制限、外貨建てカード決済や観光目的での外貨購入への課税、企業が輸出で得た外貨の強制的なペソ替え、利益配当の国外送金の実質的な禁止は、そうした規制のごく一例です。干ばつが発生してからは輸入の事前許可制(SIRA、SIRASE)が強化されるとともに、輸入代金支払いも満足に行えなくなります。政権交代後は、輸入の事前許可制は廃止され、輸入代金の支払いも確実に行われるようになりました。他方で、マクリ政権時に財政改革や構造改革が伴わない中で拙速に対外開放政策を行って危機を招いた反省から、外貨・為替規制の廃止には慎重な姿勢を貫きます。為替レートについても、政権交代直後に大幅な切り下げが行われたものの、その後は一ヶ月あたり 2%の切り下げになるように調整がされていました(クローリング・ペッグ)。市場機能を重視し、国家の介入・規制を最小限にすることを掲げるミレイ大統領ですが、外貨準備が少ないこともあり、なかなかこれらの規制を緩和できずにいました。しかし、上述したような経済改革を進めたことで、IMF や国際開発金融機関からの信頼を得て、規制緩和に必要となる外貨準備増強のため多額の融資*11 を得ることに成功します。これにより、今年 4 月には大幅に外貨・為替規制が緩和されます。為替レートが需給に応じて一定の範囲内で自由に変動する為替バンド制が導入されるとともに、個人の外貨購入量に関する上限撤廃や課税廃止が行われ、また企業の利益配当の国外送金も可能となりました。この結果、並行為替レート(脚注 6 参照)とのギャップはほとんど解消されます。ミレイ大統領とカプート経済相は「財政・金融・為替の 3 つ全ての秩序が整ったのは、この 120 年間で 74 ファイナンス 2025 Jul.(4)ビジネス環境整備
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