連載海外 ウォッチャーか*8、経済危機の責任者であるはずのマサ候補が 1 位、値段が隠されたメニューと QR コード(筆者撮影)*8) 一部の地域を除き、各選挙区で、政党ごとに国政レベル・地方レベルの候補者をまとめて掲載した投票用紙が作成され、有権者は自身が支持する候補が掲載された投票用紙を選んで投票する方式が採用されていました。それぞれのレベルで異なる政党の候補を選ぶこともできるものの、そのためには複数の投票用紙を切って投票するという手間がかかるため、結果的に国・地方で同じ政治勢力を選ぶことが多くなり、地方に政治基盤を持つ勢力にとって有利な投票様式であると考えられています。*9) ミレイ候補が 56%、マサ候補が 44%の得票となりました。り待たされることになったり、何人かで食事に行って割り勘で精算しようとすると、何十枚ものお札が机の上に□れかえることになりました。(政権交代後は 10,000 ペソ札や 20,000 ペソ札が登場し、こうした場面でも随分便利になったと感じます)日本も近年は物価高が大きな話題となっていますが、それでも一か月あたり 10%を超えるインフレの世界は想像がつかないという声を聞きます。ここでは、高インフレの環境ならではのエピソードを少し紹介できればと思います。(1) 値段表示のないメニュー:私の着任当初は、レストランのメニューでは、頻繁な価格改定のために何枚もシールが重ねられていましたが、それでも値段を表示しているところが多い印象でした。ところが、その後さらにインフレが進むとシールを張るのも面倒になったのか、とうとうメニューから値段が削除され、今では紙のメニューがあっても値段は QR コードから見る形が多くなっています。(2) 割高なクレジットカード払い:カード払いで入金が先送りになると、その間に売掛金の価値が目減りするからか、着任当初はクレジットカード払いだと 10%増しになる場合が結構ありました。(最近はインフレが落ち着いたからか、レストラン以外ではそういうケースは少なくなっています)(3) 3 ドル以下の最高額紙幣:2023 年末の最高額の紙幣は 2,000 ペソでした。これは 2022 年末時点であれば 10 ドル以上の価値があったものの、2023 年末には 2.5 ドル程の価値しかありませんでした。(いずれも公定レート換算)大型スーパーで大量の買い物を現金でする人がいると、札束を数える時間でそのレジの後ろでかなミレイ候補が 2 位という結果になり、予備選挙に続くサプライズとなります。しかし、1 位のマサ候補も大統領選出に必要な票を得るには至らず、2 位のミレイ候補との決選投票に進みます。予備選挙も本選挙も想定外の結果となり、決選投票ではどちらの候補が勝利するのか見通しが立たない戦いとなりましたが、多くのアルゼンチン国民がこれまでの政治に辟易とする中、旧来の政治勢力を代表すると見られたマサ候補との対立構図がミレイ候補にとって有利に働いたのか、11 月 19 日の決選投票では、ミレイ候補がマサ候補に予想を上回る大差をつけて勝利し*9、12 月 10 日、第 59 代アルゼンチン大統領に就任しました。こうして大統領に就任した後、経済チームのメンバーとして、カプート経済相、バウシリ中央銀行総裁、キルノ経済副大臣(金融担当)など、金融実務に通じコラム 1 高インフレ下の体験談 72 ファイナンス 2025 Jul. 5 5 政権交代後の取り組み
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