SPOT り*33、当面の間は、いわば「走りながら」制度の手直グローバル・ミニマム課税の法制化について*33) 自由民主党・公明党「令和 7 年度税制改正大綱」(令和 6 年 12 月 20 日)においても「引き続き令和 8 年度以降の税制改正において、今後発出されるガイダンスの内容等を踏まえた見直しを検討するとともに、『第2 の柱』との関係を踏まえて適正な課税を確保する観点から既存の税制について必要な検討を行う」こととされている(14 頁)。に知り得るところである。そうだとすれば、少数株主等に関して、その投資先が UTPR の適用による課税を受ける可能性があることを一般的な投資リスクと切り離して論じる意義は乏しく、許容すべき投資リスクの範疇の問題と考えられる。また、少数株主等にとっては、従前から投資していた会社等が、UTPR 施行後、買収等により新たに UTPR 課税の対象となるグループに属することとなる場合も考えられるものの、こうした場合であっても、グループに属することとなって以降、具体的な UTPR に係る納税義務が成立するまでの間において、持分の譲渡等を通じた投下資本の回収自体は一般に可能であることを踏まえれば、少数株主等に許容し得ないほどの負担を強いるものではないと考えられる。ハ QDMTTQDMTT においては、ある国で生じた QDMTT 税額の総額をその国を所在地国とする各構成会社等間で配分する方法についてモデル・ルール等に規定はなく、各国の裁量に委ねられている。そこで、我が国の QDMTT においては、当期グループ国内最低課税額から各構成会社等ごとの国内最低課税額を計算するに当たって国内の構成会社等に係る国内調整後対象租税額が個別基準税額(個別計算所得等の金額に基準税率を乗じて計算した金額)を下回る部分の金額を計算した上で、この金額が日本国内の各構成会社等に係る当該金額の合計額に占める割合を乗じることにより計算することとする(法法 82 の 19 ②一イ)など、QDMTT 税額発生への帰責性に応じて各構成会社等の具体的な国内最低課税額が決定される仕組みが採用されている(上記 3(4)【QDMTT における税額計算】④を参照)。令和 7 年度税制改正によって、グローバル・ミニマム課税に関する制度の創設という観点からは一応の区切りが付いたこととなる。今後は、先行して適用が開始している IIR を念頭に、制度の適正な実施という観点からの議論が活発化していくものと見込まれるものの、法制的な観点から見てみても、令和 8 年度以降の税制改正において引き続き UTPR 及び QDMTT を含めたグローバル・ミニマム課税全般について国際的な議論を踏まえた改正が必要となることが見込まれておしを行っていく状況が継続するだろう。また、今般のグローバル・ミニマム課税をめぐる一連のルールの法制化に際しては、令和 5 年度から令和7 年度の税制改正にかけて外国子会社合算税制の見直しも併せて行われてきたが、これについても、「令和8 年度以降の税制改正においては、『第 2 の柱』の実施等に伴う環境の変化を踏まえつつ、国際的な経済活動により生じる課税上の問題に適正に対処する観点等から必要な検討を行う」(自由民主党・公明党「令和 7年度税制改正大綱」15 頁)とされており、近年、同制度については主として「第 2 の柱」の導入に伴う事務負担の軽減の観点から行われていたのとは趣の異なる観点からの見直しが検討される可能性がある。こうして見ると、国際課税をめぐる状況は引き続き変革の過渡期にあるというべきであって、「第 2 の柱」に限ってみても 100 年に 1 度ともいわれた国際課税ルールの改革は依然として道半ばというべきかもしれない。とはいえ、これまで見てきたように、我が国においてグローバル・ミニマム課税という従来の法人所得税とは異なる税制が新たに創設された意義は決して小さくないものと思われ、今般の一連の改正による我が国におけるグローバル・ミニマム課税の導入が、今後の国際課税ルールの発展の一助となることを願っている。ファイナンス 2025 Jul. 595 最後に
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