ファイナンス 2025年7月号 No.716
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SPOT グローバル・ミニマム課税の法制化について*18) UTPR 及び QDMTT については、外国法人が納税義務者となる場合があることから、同旨の規定が置かれている(UTPR について法法 145 の 3 ①・*19) IIR/UTPR と QDMTT とで税率が異なる理由については、自由民主党・公明党「令和 6 年度税制改正大綱」(令和 5 年 12 月 14 日)15-16 頁に以下の*22) モデル・ルールにおいては、情報申告についてのみ、提供期限が定められており、確定申告書の提出期限についての定めはないが、我が国の国内法に②、145 の 4、QDMTT について法法 145 の 7 ①・②、145 の 8)。記載がある。「IIR・軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)は、外国に所在する法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、課税対象と地方公共団体の行政サービスとの応益性が観念できないため、地方税である法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)の課税は行わないこととし、現行の税率を基に法人税による税額と地方法人税による税額が 907:93 の比率となるよう制度を措置する。」(15・16 頁)「QDMTT は、内国法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、応益性が観念できること等を踏まえ、国・地方の法人課税の税率(法人実効税率 29.74% の内訳)の比率を前提とした仕組みとする。簡素な制度とする観点から、QDMTT における法人住民税・法人事業税相当分については、地方法人税に含めて国で一括して課税・徴収することとし、地方交付税により地方に配分する。これらを踏まえ、法人税による税額と地方法人税による税額が 753:247 の比率となるよう制度を措置する。」(16 頁)これを踏まえて、我が国の法人実効税率 29.74%の内訳を見てみると、それぞれ法人税率と地方法人税率との比が 907:93、法人税率と地方法人税・法人住民税(法人税割)・法人事業税所得割(特別法人事業税込)の税率との比が753:247 となるから、IIR/UTPR と QDMTT における各税率はこの比率を念頭に置いていることが分かる(なお、地方法人税における税率は、IIR/UTPR に係るものが 93/907、QDMTT に係るものが247/753 である(地法法 24 の 3、24 の 10 参照)。)。*20) 外国法人については法法 145 の 5 及び法法 145 の 9 を参照。*21) これらの情報申告制度は、移転価格税制における、いわゆる CbCR(Country by Country Reporting)の仕組み(我が国においては「特定多国籍企業グループに係る国別報告事項」の提供制度(措法 66 の 4 の 4))をベースとして措置されている。おいては、いずれについても、モデル・ルールにおける提供期限にあわせた期限とされている。に提供することを目的に、情報申告(GIR:GloBE Information Return)制度が設けられている。これに対応して、我が国の国内法においては、IIR 及びUTPR について「グループ国際最低課税額等報告事項等」の提供制度、QDMTT について「グループ国内最低課税額報告事項等」の提供制度がそれぞれ措置されている*21。これらの情報申告においては、基本的に、我が国を所在地国とする各構成会社等が、それぞれが別個に、我が国の税務当局に対して報告事項等の提供を行うこと(ローカル・ファイリング方式)が原則とされているが(法法 150 の 3 ①・④)、その特定多国籍企業グループ等の最終親会社等の所在地国の税務当局が、我が国の税務当局に対して情報交換の枠組みを通じて情報申告に係る報告事項等の提供を行うことができる一定の場合においては、日本国内に所在する構成会社等に係る報告事項等の提供義務は免除される(セントラル・ファイリング方式)(法法 150 の 3 ③・⑥)。情報申告についても、その申告期限は、原則として各対象会計年度の終了の日の翌日から1年 3月以内とされているが(法法150の3 ①・④)、上記の税務申告と同様、初回の申告期限の延長措置が設けられている(法法150の3 ⑨)*22。内国法人に係るIIR 及び UTPR の課税標準はそれぞれ「各対象会計年度の課税標準国際最低課税額」(法法82 の 4 ①)、「各対象会計年度の内国法人に係る課税標準国際最低課税残余額」(法法 82 の12 ①)である。そして、ここでいう「各対象会計年度の課税標準国際最低課税額」は「各対象会計年度の国際最低課税額」(法法 82 の 4 ②)を、また「各対象会計年度の内国法人に係る課税標準国際最低課税残余額」は「各対象会計年度の国際最低課税残余額」(法法 82の12 ②)を指す。いずれも税率は90.7% である(法法 82の5、82の13)。また、内国法人に係る QDMTT の課税標準は「各対象会計年度の内国法人に係る課税標準国内最低課税額」とされ、これは「各対象会計年度の国内最低課税額」を指す(法法 82 の 20 ①・②)。QDMTT の税率は 75.3% である(法法 82 の 21)*18*19。① 税務申告と納税我が国の IIR/UTPR/QDMTT に係る申告・納税期限は、いずれも各対象会計年度の終了の日の翌日から 1年 3 月以内であるが(法法 82 の 6 ①本文、82 の 14 ①本文、82 の 22 ①本文)、その特定多国籍企業グループ等における初回の申告・納付については、各対象会計年度の終了の日の翌日から 1 年 6 月以内とされる(法法 82 の 6 ②、82 の 14 ②、82 の 22 ②)*20。② 情報申告また、グローバル・ミニマム課税においては、租税債務の正確性を評価するために必要な情報を税務当局ファイナンス 2025 Jul. 51(5)課税標準及び税率(6)申告・納税等

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