ファイナンス 2025年7月号 No.716
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SPOT【UTPR における税額計算】図表 4 「国内グループ国際最低課税残余額」の計算(国・地域単位の配分計算)国内グループ国際最低課税残余額とは、特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税残余額に「一定の割合」を乗じて計算した金額をいう。<一定の割合> 我が国を所在地国とする構成会社等の従業員等の数の合計UTPR導入国を所在地国とする構成会社等の従業員等の数の合計② 国内グループ国際最低課税残余額の計算上記①で計算したグループ国際最低課税残余額を基に、我が国における UTPR 課税額の総額に相当する「国内グループ国際最低課税残余額」を計算する。この国内グループ国際最低課税残余額は、我が国に所在する構成会社等の有する従業員等の数及び有形資産の額のそれぞれの合計数・額の、UTPRを導入している各所在地国にある構成会社等の有するこれらの合計数・額に占める割合に応じて決定される。計算方法の詳細は、図表 4 記載のとおり(法法 82の11②柱書)。③  納税義務者となる法人の負担すべき国際最低課税残余額の計算上記②のプロセスで計算された国内グループ国際最低課税残余額について、同様に、我が国で納税義務者となるべき法人にその有する従業員等の数及び有形資*13) 「中間親会社等」及び「被部分保有親会社等」はいずれも、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(恒久的施設等に該当するものは除く。)のうち、同じグループ内の他の構成会社等や共同支配会社等に対する所有持分を直接又は間接に有するものであり、基本的に資本的支配関係の中間に位置する会社等が想定されている(法法 82 十一・十二イ参照。最終親会社等や各種投資会社等は除外される。)。その上で、被部分保有親会社等は、グループ外の者によって一定の所有持分を 20%超、直接・間接に保有されている構成会社等であり(法法 82 十二ロ)、中間親会社等と被部分保有親会社等の両者に該当する構成会社等については、被部分保有親会社等への該当性が優先される(法法 82 十一括弧書き)。*14) このように特定多国籍企業グループ等内で資本関係上、上位に位置するものから優先的に納税義務者とされる原則を「トップダウン・アプローチ」と呼んでいる。なお、構成会社等に該当する内国法人のうちに被部分保有親会社等に該当するものがある場合には、最終親会社等や中間親会社等と並列的に、被部分保有親会社等が納税義務者となるときがある。*15) グループ国際最低課税額から各国の IIR による課税額を控除した残額がグループ国際最低課税残余額となることが原則であるが(法法82 の 11 ②一柱書)、UTPR はあくまで IIR の補完的な課税制度であることから、グループ国際最低課税額のうち、最終親会社等の所有持分に対応する部分について漏れなく IIR 課税が確保されているといえる一定の場合には、各構成会社等の会社等別国際最低課税額(我が国を所在地国とする構成会社等について我が国の法令によって計算した場合に算出される金額と合わせて「会社等別国際最低課税額等」という。)の合計額をグループ国際最低課税額から控除する(その結果、グループ外の者の持分に帰属することでいずれの国・地域で IIR 課税されていない部分の会社等別国際最低課税額等も控除される)ことが認められている(法法 82 の 11 ②一イ・ロ)。× 50% +課 税 額 に 係る納 税 義 務 者となる( 法 法 82 の 3 ① 一部分保有親会社等*13)に該当する内国法人が国際最低イ)*14。納税義務者となる内国法人が負担する国際最低課税額は、会社等別国際最低課税額を有する構成会社等に対する直接・間接の所有持分(法法 82 八)を基礎に計算される(法法 82 の 3 ①一イ、法令 155 の 37 ②)。① グループ国際最低課税残余額の計算IIR の過程で計算されたグループ国際最低課税額から、各国の IIR により課税された金額等を控除することで*15、各国で UTPR の課税対象となるべき金額の総額に相当する「グループ国際最低課税残余額」を計算する(法法 82 の 11 ②)。 48 ファイナンス 2025 Jul.(注1) 「従業員等の数」は従業員等の勤務時間等を勘案して合理的な方法により計算し、「有形資産の額」は一定の有形資産の対象会計年度開始の時の帳簿価額と終了の時の帳簿価額の平均額により計算する。なお、恒久的施設等に帰せられる従業員等の数及び有形資産の額は、当該恒久的施設等を有する構成会社等の従業員等の数及び有形資産の額から除かれる。(法規38の50①~③)(注2)各種投資会社等の従業員等の数及び有形資産の額は上記の計算から除かれる。(法令155の59③④)(注3)導管会社等の従業員等の数・有形資産の額に関する特別ルールあり。具体的には、導管会社等の従業員等の数及び有形資産の額は、原則、当該導管会社等の(所在地国ではなく)設立国に配分される。ただし、導管会社等の設立国を所在地国とする他の構成会社等がない場合等の一定の場合には、当該導管会社等の従業員等の数及び有形資産の額は、上記の計算から除かれる。(法令155の59⑤、法規38の50④)(注4)外国のUTPRにおいてその国・地域の国内グループ国際最低課税残余額に相当する金額がないものとされる場合には、その国・地域に所在する構成会社等の従業員等の数及び有形資産の額は上記の計算の分母から除かれる。(法令155の59③一、④一)。※ UTPRの適用上、UTPR対象金額の各構成事業体に対する配分方法は各国の裁量に委ねられており、採用する課税方式によっては、その国・地域単位のUTPR対象金額の全部をその年度で課税できない場合があり得る。モデルルール上、そのような国の翌年のUTPR割合は「ゼロ」とされ、その国には翌年のUTPR対象金額が生じないルールとなっている。我が国を所在地国とする構成会社等の有する有形資産の額の合計UTPR導入国を所在地国とする構成会社等の有する有形資産の額の合計× 50%

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